シャドーITのメリットとそれを利用する理由
従業員がシャドーITに頼るのには、ITニーズがあるのにそのツールが組織から提供されない、そのニーズを満たすのに時間やコストがかかりすぎる、必要なツールの使用が禁止されている、といった理由があります。シャドーITには一連のリスクがありますが、従業員やチームがソフトウェアを独自に選択できるようにすることで、ユーザーには次のような潜在的なメリットがあります。
スピード:組織のIT部門にどれほど対応力があっても、新しいソフトウェアやハードウェアツールの提案、検証、選択、承認、および実装のプロセスには時間がかかります。シャドーITを利用すれば、ほとんどの場合はアプリケーションをダウンロードするよりも短時間で稼動できます。
柔軟性:組織には、競争力を維持するために、急速に変化するビジネスニーズや業界のトレンドに応じて、ツールやプロセスを適応させる俊敏性が求められます。そのためには、すばやく方向転換でき、直感的で使いやすく、あまり複雑でないツールを使用できるようにする必要があります。
コストの削減:エンタープライズクラスのアプリケーションには相応のコストがかかりますが、それでも組織はセキュリティ機能や拡張性といった一定の選択基準を満たしているという理由から、これらのアプリケーションを選択します。従業員のためにエンタープライズクラスのソリューションが提供されている場合でも、関連コストは各部門に請求される可能性が高いため、無料のソリューションの方が魅力的です。
効率:大規模な組織では、承認されたソフトウェアを従業員がダウンロードできる配布拠点があるかもしれませんが、承認されたソフトウェアであっても、インストールやライセンスの取得が必要であり、多くの組織の従業員にとってはセルフサービスのシャドーITソリューションの方が効率的で魅力的です。
ユーザーエクスペリエンス:たとえソフトウェアやクラウドサービスが組織の要件を十分に満たしていなくても、従業員は、魅力的なUXを備えたシャドーITソリューションを使いたいと考えるものです。DropboxやBoxのようなドラッグアンドドロップ方式の無料のファイル共有アプリケーションは、初期のシャドーITで最もよく見られた例です。これは、企業が承認したファイル転送プロトコル(FTP)ソフトウェアよりも使いやすいと人々が感じたためです。Gmail、インスタントメッセージングプラットフォームのSlack、ビデオ会議ツールのZoomは、まず非公式に採用され、最終的にはユーザーの要求に応える形で承認されるというのが一般的でした。
BYOD:シャドーITは、ソフトウェアだけでなく、従業員が自分のコンピューター、タブレット、スマートフォン、ストレージなどの個人用デバイスを仕事に使う「個人デバイスの持ち込み」(BYOD)現象にも及んでいます。大規模な組織では通常、会社のポリシーに従っていれば従業員が自分のデバイスを使用することが許されますが、従業員が同じデバイスをビジネスクリティカルな情報の作成、共有、保存に使用したり、適切な安全対策なしで会社のネットワークに接続したりすることは珍しくありません。