LEADERSHIP

データイノベーションに積極的な組織が得る「競争力」と「収益力」

2023年データイノベーションの経済効果2022年10月、Splunkはデータイノベーションの経済効果を定量化したグローバル調査レポート「2023年データイノベーションの経済効果」を発表しました。SplunkとEnterprise Strategy Group社が2022年5月、2,000名のITリーダー/セキュリティリーダー/ビジネスリーダーを対象に調査したものです。

なお、同調査レポートでは「データの分類、集約、品質、分析スキル、分析ツール、監視」の6つの主要領域に対し、6つすべてにおいて優れている組織を「リーダー的組織」、6つのうち0~2つの場合は「ビギナー組織」、3~5つの場合は「取り組み中の組織」と定義しています。

組織におけるデータ活用の成熟度

調査で浮かび上がったデータイノベーションリーダーの「3つの特徴」

レポート調査結果から、データ活用のリーダー的組織には「収益の拡大とイノベーションの加速」「競争力の高さ」「レジリエンスの強化」の3つの特徴があることが明らかになりました。

1. 収益の拡大とイノベーションの加速

リーダー的組織は、売上総利益を9.5%増加させると同時に、1年間に9種類の新製品をリリースしています。これはデータイノベーション能力が高くなければ実現できないことといえます。ビギナーレベルの組織が1年間にリリースする新製品は平均3種類です。データの収益化(優位性を実感している割合)は、リーダー的組織が59%であるのに対し、ビギナー組織は32%でした。

リーダー的組織はまた、データイノベーションを営業、マーケティング、カスタマーサービス/サポートに適用することで、「顧客生涯価値の向上に貢献した」と報告する割合がビギナー組織の30%に対して49%と、より高い割合になっています。

2. 競争力の高さ

リーダー的組織では、「競合他社よりも的確な意思決定がほぼ常にできている」と回答した割合がビギナー組織の5.7倍にのぼります。また、「今後数年間、市場で競争優位を維持し成功し続けることができる」と考える組織の割合もビギナー組織の4.5倍でした。

また、リーダー的組織はビギナー組織と比べ、1年前には販売されていなかった製品からも、より多くの収益を得ています。リーダー的組織の収益の平均20%は、過去1年間に発売された製品から得られており、ビギナー組織の約6%の3倍以上に達します。

この製品のイノベーション能力は、顧客満足度の向上、新規市場への参入、新しいチャネルでの顧客獲得、顧客内シェアの拡大、成約率の向上、顧客維持率の改善、ブランド認知度の向上においても、ビギナー組織の約2倍の効果をもたらしています。

3. レジリエンスの強化

リーダー的組織は、高いレジリエンスを持ち、セキュリティインシデントをより迅速に特定かつ対処できることが明らかになっています。リーダー的組織が、セキュリティ問題に起因するアプリケーションの可用性/パフォーマンスの問題の調査と解決にかかった時間は平均17時間であり、ビギナー組織の19時間に対して11%レジリエンスが高い結果となっています。

また、サプライチェーンの最適化、予期せぬ障害発生などの課題を解決するためにデータを活用することで、ビジネスレジリエンスにも大きな効果が期待できます。リーダー的組織ではデータ活用によるサプライチェーンの課題の改善効果が特に高く、コストが減ったと回答した割合が79% (ビギナー組織では60%)、障害が減ったと回答した割合が73% (ビギナー組織では51%)にのぼりました。

リーダーとビギナーの差が激しい日本

調査レポートでは、日本市場についてもまとめられています。日本のリーダー的組織ではデータの活用が進んでおり、組織内で生成されるデータの66%を活用していることが分かりました。これに対して、ビギナー組織では48%、取り組み中の組織でも57%にとどまりました。日本では、51%以上のデータを活用している組織が全体で51%であり、他のすべての国の平均(36%)を上回りました。

一方で、「今後24カ月間に優先的に対応すべきと考えるビジネス/ITのすべての課題の中で、データの把握と活用はどのくらい重要な課題ですか?」という質問に対して、「社内の最優先課題である」と回答した日本の組織は13%にとどまり(全体の平均は26%)、調査対象の9カ国の中で最下位となっています。

日本の組織において、データイノベーションを阻むものとして挙げた課題は、「アイディアを実現するために各チームを調整してまとめるのが困難(29%)」「イノベーションに時間がかかりすぎる(28%)」「リスクを過度に嫌う組織文化がある(25%)」がトップ3となりました。

リーダー的組織では、経営幹部レベルでイノベーション志向を実践しています。例えば、「カスタマーサクセス」「データガバナンス」「データ戦略」「データイノベーション」に関する経営幹部レベルの役職を設けているリーダー的組織は、90%以上ですが、ビギナー組織ではその割合が大きく下がります。日本では、これらの役職を設けている組織が56%~62%と、ビギナー組織全体の平均よりも低い結果になっています。

これは、企業内におけるIT人材不足が起因しているためと予測されます。ユーザー企業内にIT人材が少なくベンダーに依存している現状の日本市場では、組織内部に技術を蓄積できずに内製化は困難な状況です。そのような状況下で必要なことは、複数の部署間で活躍できるデータ分析チームを構築することであると考えます。人材ローテーションの文化が存在する日本企業では、マルチ人材の育成によるベストプラクティスを実践することが重要なのです。Splunkでは、カスタマーサクセスチームが人材育成を担っています。

データイノベーションを促進するために

Splunkでは、データイノベーションを促進するための戦略として、次の8つを挙げています。

1. データイノベーションを優先事項にする

ビジネス/ITにおいて、データの把握と活用が今後24カ月間の最優先課題だと回答した割合は、リーダー的組織では60%にのぼりましたが、取り組み中の組織では34%、ビギナー組織では13%にとどまりました。従業員は、進捗について自ら責任を負ったときに高いパフォーマンスを発揮する傾向があり、リーダー的組織においては、データイノベーションの目標設定、進捗確認、効果測定が実施されています。

2. 成功に向けて投資する

リーダー的組織では、データの調査、監視、分析に必要なソリューションや人材に対して、ビギナー組織よりも53%多く技術予算を割り当てています。また、リーダー的組織は、ポイント型のソリューションよりも統合プラットフォームに投資する傾向があります。

3. 経営幹部レベルでイノベーションに取り組む

リーダー的組織では、経営幹部レベルでイノベーション志向を実践しています。カスタマーサクセス、データガバナンス、データ戦略、データイノベーションに関する経営幹部レベルの役職を設けているリーダー的組織は90%以上にのぼります。

4. センターオブエクセレンス(CoE)を構築する

リーダー的組織は、データイノベーションの取り組みにおいてチームを分散するよりも集約する傾向があります。つまり、データイノベーションを達成するために、組織内の優秀な人材などのリソースを1か所に集中させるセンターオブエクセレンス(CoE)を構築する傾向があるということです。「常にCoEを頼る」と回答した割合は、リーダー的組織では 57%、取り組み中の組織では33%、ビギナー組織では15%と、リーダー的組織が集約のアプローチを徹底していることが伺い知れる結果となりました。

5. テクノロジー関連のデータストリームを重視する

近年のイノベーションを最も促進させた主なデータソースとして、リーダー的組織は、ネットワークデータ(30%)、アプリケーションデータ(28%)、ビジネスサービストランザクション/パフォーマンスデータ(28%)を挙げたのに対して、ビギナー組織は、顧客データ(36%)、売上データ(30%)、運用テクノロジー/マシンデータ(24%)を挙げたことで、リーダー的組織は「テクノロジー関連のデータ」を重視していることが明らかになりました。

6. 次に「顧客を知る」ためのデータを活用する

リーダー的組織は、ネットワークデータや運用データ等の活用を行うことでインフラの構築に注力した上で、顧客や組織に関するデータ活用を行うことが考えられます。

7. 製品イノベーションではスピードと品質のどちらかに集中する

ビギナー組織と取り組み中の組織は、迅速なイノベーションの推進と、イノベーションが市場でどのように受け入れられるかの調査を、バランスを取りながら進める傾向にあります。一方、リーダー的組織では、両者のバランスを取ると回答した割合が最も少なく、スピードまたは市場への適合調査のどちらか一方を優先しています。

8. 幅広く警戒心を持つ

リーダー的組織は、取り組み中の組織やビギナー組織に比べて、現状に満足せず、市場での競争に強い懸念を抱いています。データの新しい活用法を開拓することで、まだ参入できていない、または存在していない市場で十分な競争力を獲得する自信があると回答した割合は65%にのぼり、ビギナー組織の45%を大きく上回りました。

データを活用して将来に備える

このデータイノベーション調査レポートは、インフレ、サプライチェーンの混乱、地政学的な衝突によって経済が不安定さを増している時期に制作されました。

多くのビジネスリーダーが長引く不況の中で組織をどう位置付けるべきか検討する中で、リーダー的組織は、イノベーションの継続能力だけでなく、逆境に直面した際のレジリエンスの高さにも自信を持っています。自社が市場で非常に強固な地位にあると回答したリーダー的組織の割合はビギナー組織の4.5倍にのぼります。

また、急増するデータに対応しなければならないという重圧は、ほぼすべての組織が抱えています。一方で、重圧を強く感じている組織ほど高い成果をあげています。「重圧を感じている」と回答した割合は、リーダー的組織では67%だったのに対して、取り組み中の組織では41%、ビギナー組織では15%にとどまっています。

デジタルトランスフォーメーションに休みはなく、データの重要性は高まり続けているのです。データイノベーションのリーダー的組織は、成功の加速を実現する公式を見つけています。ここでご紹介したその知見を組織力の強化にぜひお役立てください。

データイノベーション調査レポートを以下のリンクからダウンロードできます。
2023年データイノベーションの経済効果

Splunk Services Japan合同会社 日本法人 社長執行役員

Splunk Services Japan合同会社 日本法人 社長執行役員として日本国内におけるビジネス開発、Go-To-Market戦略の策定、営業統括を担う。

2015年11月にSplunkにシニアセールスマネージャーとして入社後、上級職を歴任し、大規模なお客様の獲得にチームを導く。現職の前は、エリアヴァイスプレジデント兼ストラテジックセールスの責任者としてとしてセールスチームを指揮し、お客様、パートナー様との強固な関係を構築。 

Splunk入社以前は、1999年に日本アイ・ビー・エム株式会社でキャリアをスタートし、2013年にマカフィー株式会社に入社。通信・メデイアおよび運輸・旅行業界の営業部長を務める。

慶應義塾大学経済学部卒業。