サービス運用におけるAIイノベーションと管理のバランス

CIO Office Greg Ainslie-Malik , Maarten Dragtstra

AIによって、サービスチームは顧客のニーズに迅速に対応し、日常業務を効率化できます。しかし、急速な導入には新たな課題も伴います。

チームはデータとプライバシーの管理を維持しながら、価値を引き出し、効率を向上させることに苦労しています。AIがカスタマーエクスペリエンスと内部プロセスを変革する中で、メリットとリスクのバランスをどのように取ればよいのでしょうか?

Splunkの『2025年のオブザーバビリティの現状』レポートによると、職場におけるAI導入はすでに転換点を迎え、今では実務担当者の4分の3以上が日常的にAIを使用しています。この変化が最も顕著なのはサービス運用の分野で、そこではAIを活用してチームがスピードと効率を高めています。実際、McKinsey社の調査によると、サービス運用にAIを導入した組織の半数以上が、収益の増加とコストの削減を実現しています。

しかし、多くのリーダーは、AIによって内部で何が起きているかを把握するのが難しくなるとも述べています。AIがカスタマーエクスペリエンスと日常業務の両方で大きな役割を果たすようになった今、これらのツールを最大限に活用するには、「設定して終わり」という考え方では明らかに不十分です。この記事では、AIを活用してサービス運用を強化する際にチームが直面しがちな一般的な考慮事項を取り上げ、リスクと品質を管理するための重要な取り組みをご紹介します。

AIでカスタマーエクスペリエンスを向上させ、価値を刷新

顧客満足度を維持することは、サービスの収益を最大化し、生涯価値を生み出すための最善の方法の1つです。顧客の体験をパーソナライズし支援するのはAIが得意とするところですが、その成果を実現する道のりは必ずしも平坦ではありません。

AI導入は「ビッグバン方式」で一気に進めますか、それとも段階的に進めますか?成功している企業の多くは、指針となるビジョンを掲げつつ、段階的な実現のための期待値も設定しています。たとえば、顧客が商品やサービス構成を選ぶ際、AIに好みや状況に基づいた意思決定の支援をさせることから開始できます。また、小売業では、顧客向けアプリに意思決定支援システムを組み込み、「友人たちとの3コースディナー、1人はベジタリアン」などの提案をして、関連する食材を買い物かごに直接追加できるリンクを提供することも考えられます。

しかし、多くの組織はコストの削減と効率化のみに注力し、AIの可能性を十分に活用していません。削減したコストだけでAIの効果を評価すると、AIの真の力を見落としてしまいます。たとえば、顧客維持率の向上や新規ビジネスの展開、そしてAIなしでは実現できなかった、より豊かで価値の高いカスタマージャーニーの提供などです。こうした狭い視野では、大きな価値を取り逃がすことになりかねません。

削減したコストだけでAIの効果を評価すると、AIの真の力を見落としてしまいます。たとえば、顧客維持率の向上や新規ビジネスの展開、そしてAIなしでは実現できなかった、より豊かで価値の高いカスタマージャーニーの提供などです

サービス運用におけるAI活用の成功とは、こうした、より高度なメリットの実現を意味します。重要なのは、コストをどれだけ削減できるかではなく、新たな価値をどれだけ生み出せるかです。顧客は、よりスムーズでパーソナライズされた体験を通じて、エンゲージメントを高め、リピーターとなり、利用を増やしているでしょうか。真の成功は、これらの成果をリアルタイムで継続的に測定することで決まります。

今日のカスタマージャーニーの多くは、限られた数の予測可能なルートで進みます。たとえばオンラインショップでは、顧客は通常「商品を見て、カートに入れ、購入する」といった、あらかじめ設定され高度に最適化された流れに沿って進みます。このような流れの要素がAIアシスタントやエージェントによって改善されたり置き換えられたりするにつれて、組織はカスタマーエクスペリエンスが時間とともにどのように変化するかを再考するだけでなく、こうした変化が業務運用にどのような影響をもたらすかについても見直すべきです。AIドリブンのやり取りによって、ジャーニーの早い段階でスピード、パーソナライズ、正確さなどへの期待が高まることで、後続のプロセスに一貫してコスト効率よくこれに応える必要が生じることがあります。こうした高まる期待にジャーニー全体のプロセスを適合できなければ、顧客の信頼が揺らぎ、AIによって改善しようとしていたカスタマーエクスペリエンスそのものが損なわれるおそれがあります。

AIの拡張に合わせてデータに基づくインサイトを活用

カスタマーエクスペリエンスにAIアシスタントやエージェントを導入するケースが増えると、エージェント間のインタラクションから生成されるマシンデータが急増します。このデータの急増に対応し、業務を計画通りに進めるためには、高度なリアルタイムの可視性とシステム間で情報を相関付ける能力が不可欠です。適切な戦略があれば、これらのインサイトを活用して理想的なカスタマージャーニーを把握したり、サービスの可用性や必要なタイミングと場所を確認したり、セキュリティや不正行為のリスクを迅速に検出したりできます。

AI導入が広がるにつれて、リアルタイムの可視性とシステム間でデータを相関付ける能力が、業務運用の成功に不可欠になります

この差し迫ったデータの急増を踏まえて、サービスの可視性を構築し強化する戦略を策定することで、関連するインサイトを活用できる体制を整えることが重要です。

運用担当者を支援しながら品質とリスクを管理

満足度の低いカスタマーエクスペリエンスを特定し、適切に対応することは、顧客がAI対応サービスを利用しているかどうかに関わらず、きわめて重要です。AIは、顧客の問題の検出、調査、対応を自動化できます。たとえば、顧客向けアプリケーションのページ読み込み時間にベースラインを自動で設定し、異常な遅延の発生を運用チームにアラートするようにします。エージェントは、上流および下流のサービスに関するコンテキストをさらに収集してアラートを補強することで、アナリストによるトリアージを容易にしつつ、調査の支援もできます。このような体験を実現するために、運用チームは主に次のような点を検討する必要があります。

AI導入に向けて現状と将来像を対応付けることで、チームは十分な準備を整え、取り組みを主体的に開始できます。

AI導入を成功させるには、基本的な要素も重要です。たとえば、AIの利用を保護および監視してモデルのジェイルブレイクなどの新たなリスクに対応し、サプライチェーンや情報フロー(特に外部プロバイダーを利用する場合)を文書化し、調査に備えてエージェントのアイデンティティをマッピングすることなどです。また、サービス品質を確保するには、AIソリューションの可用性とパフォーマンスをオブザーバビリティ戦略に組み込み、精度を検証するための外形テストを実施し、AI利用に伴うコストを管理し、マシンデータを活用して継続的に最適化することも大切です。AIのROIを測定し、戦略が顧客とビジネス全体に価値をもたらしているかを追跡しましょう。

AIは適切に導入すれば、サービス運用の能力を何倍にも高め、生産性の向上と新たな効率性をもたらすことができます

成功の鍵は、ROIの再定義、リスク管理、緊急対応策の策定といった、慎重かつ体系的な取り組みにあります。今から土台を整えておけば、業務プロセス、収益、顧客満足度の長期的な向上を促進できます。

このブログはこちらの英語ブログの翻訳、中里 美奈子によるレビューです。

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