エージェンティックAIの到来は、私たちの時代を特徴づける技術革新の1つと言えるでしょう。私は幸運にも、これまで数多くの技術革新の波を目にしてきましたが、近年のAIの進歩のスピードと変革力は、かつてないほど大きなインパクトをもたらしています。組織にとって、こうしたAIの新たな機会を活かすと同時に、それに伴う複雑さを理解することが、これまで以上に重要になっています。私がSplunk、そしてシスコに魅力を感じたのは、エージェンティックAIの時代における業務の在り方を根本的に変革できる大きな可能性を感じたからです。
デジタル運用は、ソフトウェア主導でネットワークを通じて行われており、私たちの業務、すなわち企業、行政、サービスを中断なく持続させるための複合的かつ継続的な活動のほぼすべての中核を担っています。エージェンティックAIがこうした運用を支援する場面は、次第に増加しています。あらゆるシステム、デバイス、インタラクションによって生成されるログ、メトリクス、トレース、イベントといったマシンデータは、こうしたエージェンティックシステムの効果を引き出すうえで不可欠な資源です。これまでにも、マシンデータは業務の安全性、信頼性、効率性を維持するうえで重要な役割を果たしてきました。AI時代を迎えた今、その重要性はかつてないほど高まっています。
問題は、多くの組織が膨大なデータに圧倒されている一方で、必要なインサイトを得られていないことです。組織は日々、デジタル運用に関する数百、数千の重要な意思決定を、コンテキストが不十分な状態で行っています。十分なコンテキストがなければ、どんなに詳細なマシンデータも単なるノイズに過ぎません。その結果、システムやチームの間に運用上の盲点が生じ、効率が低下します。エージェンティックAIの時代を迎え、AIの新しい運用形態やテクノロジーによって環境がますます複雑化するにつれて、この問題はさらに深刻化しています。エージェンティックAIによって、あらゆる行動や対応の速度が向上しますが、このことは、組織が先手を打って予防策を講じられるというメリットとなる一方で、攻撃者に悪用されるリスクにもなります。
これらの課題を解決して組織のデジタルレジリエンスを確保することが、私がSplunkに入社した目的です。解決には、次の3つの重要な要素が必要です。
Splunkとシスコの連携は、統合とコンテキスト化を通じて大規模なデータの価値を引き出すという唯一無二の相乗効果をもたらします。世界中のマシンデータの多くがシスコのネットワークを経由しているため、ネットワーク、セキュリティ、アプリケーションにわたるインフラのテレメトリをもとに、デジタルエコノミー全体を網羅できる比類のない可視性を実現できます。Splunkは、日々ペタバイト単位のマシンデータを処理する、市場をリードするデータプラットフォームです。卓越した機能によってマシンデータのアクセス、正規化、相関付けを可能にし、分断されたデータサイロをコンテキストとともにリアルタイムで一元的に可視化することで、広範囲にわたる実用的なインサイトの抽出を実現しています。
エージェンティックAIの分野においてこそ、シスコとSplunkの連携は真価を発揮します。自律的に推論し、適応し、行動するエージェントの能力を製品に組み込むことで、既存の製品ポートフォリオの強化に加え、新たなソリューションの創出も促進されます。
私たちは、可視化からインサイトの抽出に至るまで、マシンデータのライフサイクル全体を管理するAIネイティブの機能を導入し、Splunkのデータプラットフォームの変革に取り組んでいます。また、エージェント型のSOC、オブザーバビリティ、ネットワーク保証の基盤を構築しながら、AIアプリケーションスタックのセキュリティ、コンプライアンス、パフォーマンスの強化に役立つ重要なガードレールを提供しています。AIの力は、最終的にデータによって引き出されます。私たちは、データをもっと活用しやすくすることで、AIをビジネスに合わせてカスタマイズできるよう、急ピッチで取り組んでいます。
相互運用性と拡張性によるサイロの解消は、必須条件となっています。これはSplunkのDNAの中核をなすものであり、REST APIやSDK、異なるデータソース間やハイブリッド環境内での連携から、OTel (Open Telemetry)、OCSF (Open Cybersecurity Schema Framework)などのオープンスタンダードへの対応に至るまで、さまざまな形で体現されています。さらに、Model Context Protocol (MCP)やA2Aなど、AIの新しいオープンスタンダードの採用を進めており、エージェントとSplunkプラットフォームの間の連携の円滑化に取り組んでいます。これに関連して、当社では最近、Splunk Cloud PlatformのためのMCPサーバーのリリースを発表しました。この分野における今後の展開にご期待ください。相互運用性は、包括的なデータインサイトを獲得して盲点をなくし、プロセスワークフローの自動化によって生産性を高めるうえで非常に重要です。
一方、これは人間にとっての革命であることも忘れてはなりません。エージェンティックAIは、インサイトを可視化して定型的なアクションを自動化するアシスタントとしての役割を担い、アナリストやエンジニアがより価値の高い業務に専念できるよう支援します。Human-in-the-Loop(人間がAIワークフローに参加)およびHuman-on-the-Loop(人間がエージェントを管理)型のフレームワークは、AIドリブンなアクションが常に組織のコンテキスト、価値観、ポリシーに沿って行われるようにするうえで役立ちます。
Splunkとシスコがこれら3つの要素を組み合わせた結果、AIネイティブなSplunkを実現する新たな基盤が生まれました。
シスコとSplunkは連携して、安全性とレジリエンスに優れた、常時稼働可能なデジタル企業の構築に必要なデータ基盤、自律型インテリジェンス、クロスドメインのインサイトを提供します。組織はサイロ化されたマシンデータを実用的なインテリジェンスに変えることで、AIの可能性を引き出し、チームの能力を高め、顧客体験を向上させ、イノベーションを大規模に推進することができます。
詳しくは、毎年開催されるSplunkのユーザーカンファレンス、.conf25でお伝えしますので、ぜひお越しください。今年は9月8日~11日の日程でボストンで開催されます。シスコの最高プロダクト責任者であるJeetu Patelと私が登壇するセッションにぜひお立ち寄りください。Splunk史上最も重要なイノベーションの一部を公開します。次世代の製品を設計する際に、私たちが常に最優先に考えているのはお客様とその課題です。.conf25を通じて、インサイトを共有し、新製品をご紹介し、お客様とともに成果を祝えることを心待ちにしております。ボストンでお目にかかるのを楽しみにしています。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳、前園 曙宏によるレビューです。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。