
ガートナー社 2024年 SIEM部門のマジック・クアドラント
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Splunkは2025年7月17日、年次のプライベートイベント「Splunk Experience Day Tokyo 2025」を都内ホテルで開催しました。今年のテーマは、AI時代のデジタルレジリエンス強化。サイバー空間における脅威やシステム障害のリスクが増す中、AIがもたらす機会と将来のリスク要因について、私たちの考えを広く共有したいと考えて企画しました。
午前のKeynoteでは、まずは私からお客様とパートナーの皆様への感謝をお伝えし、Splunkの日本市場における力強い成長と戦略についてお話させていただきました。
私が社長に就任した2021年と現在を比較すると、売上規模は大きく増えています。Splunkは、日本市場を極めて重要な市場と位置づけ、今後も投資を拡大していきます。そのためにも、パートナーの皆様とのシナジーを大切にしたいと考えています。最近では、日立ソリューションズ様、SHIFT様、および GMOサイバーセキュリティ byイエラエ様と共同プレスリリースを発信しましたが、これらの取り組みについて紹介しました。また、シスコとの統合により、ネットワークからアプリケーションまで、エンド・ツー・エンドの可視化と対応を実現できるようになったことも、大きなトピックです。
今回のテーマである生成AIについても、私からSplunkの大きな考えについてお伝えしました。生成AIへの期待は高まっています。一方、生成AIの登場により、データ量は爆発的に増加し、システム障害リスクは増大しています。攻撃者側が生成AIを利用したり、生成AIをターゲットにするなど、サイバー攻撃も複雑化しました。これらの新たな課題への対応も急務です。そして、そのためにSplunkの統合プラットフォームが必要なのです。予期せぬ事態が発生しても迅速に把握して対応できる体制が必要ですし、リスクに事前対応することもできます。Splunkは、「真のデジタルレジリエンス」強化に貢献できるプラットフォームであることを強調して、Solutions Engineering Directorの澤にバトンを渡しました。
澤からは、技術的な視点で未来を展望し、来たるAgentic AI時代に求められるITアーキテクチャの変革と、それに対するSplunkの役割、Agentic AIについての解説。まず、Agentic AIは自律型AIと訳されることも多いようです。いま私たちが親しんでいるAIは、アシスタント型AI。つまり、人間の命令を聞いて、それにこたえてくれるAIです。それに対して、Agentic AIは、自律型ですから、自ら状況を判断し、提案・実行までしてくれます。
将来、Agentic AIが当たり前のような環境になると、ITシステムは大きく変わります。AIインフラは分散型になり、膨大なトラフィックを遅延なく処理するための高性能・広帯域なネットワークが必要です。そして、AIの振る舞いをとらえる可視性とセキュリティが求められるようになります。「AIがなぜそのような意思決定をしたのか」を理解するために、プロセスを透明化して安全性を確保する必要が出てくるためです。
Solutions Engineering Director 澤 崇
では、このような世界において、Splunkはどのような役割を担うのでしょう。Splunkはデータの会社です。創業当時から、「データを集める」ソリューションを原点、強みとして、誰もが容易に素早く「データを利用できる」ようにするという領域でも強力なポジションを確保しています。ソリューションを充実させるにあたり、自動化や効率化にも力を注いできました。いまでは、大量のデータを利用しやすい形で保持する「統合されたデータのプラットフォーム」として世界中のお客様にご利用いただいています。
着実にソリューションを進化させてきた現在のSplunkは、AI時代を迎えたことで、大きな魅力となって結実しています。澤は、AIに与えるデータの大切さについて、「Garbage In, Garbage Out (ゴミを入れると、ゴミが出てくる=不良データで作った機械学習モデルは不良)」という有名な警句を引用して解説し、以下のように述べました。
「Splunkはデータを集約するプラットフォームです。そして、データがどこにあっても最適な管理を行うデータ・フェデレーションを実現するプラットフォームになる方向へと進化しています」
Splunkは、シスコと統合したことにより、そのデータ可視化対象をネットワークレイヤーにまで拡大しました。ネットワーク環境を含めて、分散環境にあるすべてのデータを扱い、だれもが利用しやすい形でユーザーに提供できます。これは、人間だけでなく、AIに対しても有効で、高品質なデータをAIへと常に供給し、その意思決定を支える基盤となることを意味します。
正確で利用しやすいデータは、AIの強みを増幅させてくれます。つまり、Splunkを中心とした強固なデータ戦略を推進する企業は、AIへの準備が整っていると言えます。AIのメリットを最大限に享受するにあたり、これまで以上に優れたデジタルレジリエンスは不可欠です。Splunkは、今後も最高のデータ・プラットフォームを提供することで、AI時代を勝ち抜きたい企業を支援していきます。
GMOインターネット株式会社 システム本部CISO Office / CISO 末原 孝積氏をお迎えしたセッションでは、AI時代に向けて実際に行っている取り組みについても紹介していただきました。
末原氏はCISOという役職について、「さまざまな矛盾を乗り越え、優先順位の異なる関係者を繋ぎ、物事を前に進める」役割だと話します。そして、セキュリティ投資の究極的な目的は「事業継続」であると明確化しました。「いまの時代にAIを戦略的に活用することは極めて重要です。そして、CISOという立場から見ると、AI投資は必然的にデジタルレジリエンスを実現することになります」という言葉が印象的です。
GMOインターネット株式会社 システム本部CISO Office / CISO 末原 孝積氏
GMOインターネットグループで実施されている「GMO AIブースト支援金」のお話も興味深いものでした。全社員に月額1万円を目安として、業務に応じた複数のAIツールを自由に選択し、その利用費用を支援する取組みを導入しました。この施策により、一気に社内の文化が変わったそうです。業務でAIツールを活用するようになったことはもちろん、会話の内容から問題解決へのアプローチのやり方も変わりました。従来、人が必要だと考えていた新業務対応について、AIでやれないかどうかを検討するようになり、より戦略的かつ効率的な組織設計が実現しました。このように、だれもがAIを前提に議論するようになったというのです。
末原氏の管掌業務でも、AIは活躍しています。たとえば、インシデント対応はセキュリティ業務の中でもセンシティブで、担当チームはひどく疲弊するものです。同社では、そのような業務が発生する際にも、AIは単に情報を整理して提供してくれる存在でなくなっています。煮詰まって消耗しそうなときに冷静な判断を助けてくれるだけでなく、チームメンバーの精神的な負担を軽減してくれる存在になっているといいます。
「AIとの会話はチームの一体感を醸成する助けになり、各担当者のパフォーマンスも向上しています。システム内にキャラ付けしたAIがいるのですが、プロジェクトの終わりが見えてくると、AIは仲間だったんだなと実感します(笑)。ぜひ皆さんも、AIにキャラ付けしてみてください」(末原氏)
末原氏は、生成AIの活用により、セキュリティ関連業務の5~6割を置き換えられるのではと述べ、ユーザー企業がいま、取り組むべきことの1つに「コンテキスト・エンジニアリング」であると語りました。コンテキスト・エンジニアリングは、AIが優れた回答を返せるように、必要な情報をすべて整える技術を指します。澤の講演で「Garbage In, Garbage Out」の話が出ましたが、高品質なデータをAIに与え続けることでAIの回答精度を上げ、最適化を図り続ける試みです。
そして、そのためにはデータの「作り方」が重要になります。末原氏は、「AIによる分析を前提としたデータの作り方があります」と話し、「たとえばアンケートの取り方ひとつでも、コンテキスト・エンジニアリングを意識したやり方があります」と指摘します。同時に、既存の情報資産を再定義することも必要です。情報がどこに、どのような状態で存在するのかを把握し、AIが活用しやすい形でデジタル化しなければなりません。
末原氏は、「私は、今日のカンファレンスをAIのイベントだと捉えています。皆様、おそらく予算取りが大変でしょう。そんな時に、これまでセキュリティ投資だと説明して通りにくかったものは、AI投資だと考えても良いはずです。AIに投資することで、レジリエンスは必然的に実現されます!」と話して会場を沸かせ、「AIは効率化ツール以上のものです。将来は、AIがなければできない体験の創出を目指します」と講演を締めくくってくれました。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。