今日のSOCが抱える主な課題と、非効率性を克服してレジリエントな未来志向のSOCを構築するための戦略をご紹介します。
重要なテレメトリをすべてSplunk環境に取り込んで、必要な可視化を実現すれば、あらゆる場所のデータを保護できます。
Children’s National Hospitalは、脅威の状況をより明確に把握し、検出率を向上させることで、医療システムや患者ケアに影響を及ぼす深刻な脅威や障害に迅速に対応する必要がありました。
Splunkを活用して数十の新しいセキュリティユースケースと攻撃フレームワークを追加した結果、セキュリティチームはインシデントとイベントを相関付けて、脅威の検出と対応を迅速に行えるようになりました。
ワシントンD.C.にあるChildren’s National Hospitalは、この困難なミッションを達成するため、救命医療を含む幅広い医療サービスを提供しています。19億ドル規模の医療機関である同院は、レベル1外傷センターとして、約17の関連施設を支援し、年間36万人の患者に対応しています。
多くの子供たちが、がんなどの重篤な疾患のために複雑で長期的なケアを必要としている中、X線装置や心電図モニターといった、ネットワークで接続された医療システムの安全を確保し、攻撃から保護することは、子供たちの健康と安全を守るうえで極めて重要です。
「サイバー犯罪者の世界では、容赦のない攻撃が行われます。小児病院ももはや安全ではありません」と、Children's National Hospitalでサイバーセキュリティ運用担当ディレクターを務め、セキュリティ分析、脆弱性管理、IoT、およびアイデンティティ/アクセス管理の各チームを監督しているSharon Finney氏は言います。
そこでSplunkの出番です。4年前にSplunkを導入して以来、Finney氏とチームはSplunk Enterprise Securityを活用することで、検出率を40%向上させ、驚異的な速さで脅威を阻止できるようになりました。その結果、病院と子供たちは常に安全に保たれています。
病院のように迅速な対応が求められ、ストレスの多い現場では、ツールの複雑さによる混乱は、セキュリティチームにとって最も厄介な問題です。Splunkを導入するまで、Finney氏とチームは毎日のようにこの問題と格闘していました。小児医療に特化した多数の専門ツールやアプリケーションが使われていることが、さらなる複雑化を招き、複数のツールの切り替えによる負担や可視性の低下といった問題を引き起こしていたからです。
「各ツールで生成される情報を1つの場所に集約する仕組みがなかったため、何度もツールを切り替えながら、データを手動で関連付け、インシデントが発生してからようやく確認するしかなかったのです。情報量が多すぎて、もはや人の手では処理しきれなくなっていました」と、Finney氏は振り返ります。
Finney氏とチームは、デバイス、ID資産、ネットワークトラフィックから取得したデータを集約できる一元化されたプラットフォームを必要としていました。こうしたプラットフォームがあれば、集約したデータの正規化と相関付けを行ったうえで、最新の攻撃フレームワークや規制基準、さまざまな脅威ベクトルに照らしてデータを評価することが可能になります。
Splunkの一元化されたプラットフォームにより、どの脅威を阻止できたかなど、攻撃の状況をより明確に把握できるようになりました。また、セキュリティ防御を突破した脅威や、脅威インテリジェンスフィードから得られる侵害の痕跡(IoC)を確認できることで、Finney氏のチームはアラートを通じて脅威のラテラルムーブメントの発生をいち早く認識し、迅速かつ正確に対処できるようになりました。
「攻撃者は攻撃が一度でも成功すれば目的を達成できますが、私たちは毎回ミスのない対応を求められます。これほど大量のデータや多様なツールを扱いながら常に正しい判断を下すには、それらすべてを統合できる相関エンジンを導入する必要がありました」と、Finney氏は説明します。「適切なツールを導入したことで、以前より多くのインサイトを毎日得られるようになりました」
重要なテレメトリをすべてSplunk環境に取り込んで、必要な可視化を実現すれば、あらゆる場所のデータを保護できます。
Children’s National Hospitalは当初、オンプレミスでSplunkの導入を始めました。しかし、1年間運用した結果、インフラ管理の負担を軽減するには、クラウド環境への移行が不可欠であることがわかりました。クラウドへ移行することで、チームはデータの分析やSplunk環境の構築に集中できるようになります。
「私たちはツールのさまざまな機能を十分に活用できていませんでした。ツールの運用管理やデータソースの統合作業に追われていたからです。最終的には、次の3年間の方向性について、非常に難しい選択を迫られました」と、Finney氏は言います。
Children’s National Hospitalのセキュリティ運用チームは、セキュリティ業務に役立つユースケース、データモデル、インデックスを開発し、より多くの関連データをSplunkに取り込むことに注力するため、Splunk Cloudを選択しました。
チームはMSP Trustwave社の支援を受けながら、この1年半の間に80ほどのユースケースを構築しました。そして、これらのユースケースを、今や同院のセキュリティ運用の中核を担うSplunk Enterprise Securityに実装しました。「組織にとっては、一切インフラを気にする必要のないクラウド上でSplunkを運用する方が合理的でした」と、Finney氏は言います。「このおかげで私たちの負担は大幅に軽減され、Splunk環境の構築に専念できるようになりました」
セキュリティアナリストや脅威ハンターにとって、環境の全体像を把握することは極めて重要です。Splunkを利用するまで、チームはソーシャルエンジニアリングのパターンや戦術など、脅威のパターンを把握するのに苦労していました。しかし、Splunkの自動化機能によって、チームは脅威のパターンを把握するだけでなく、脅威にすばやく対応できるようになりました。
サイバー攻撃者は、フィッシングキャンペーンやその他のソーシャルエンジニアリング手法を使って、ユーザー認証情報に不正にアクセスしていました。このような攻撃では、ときにはパスワードがリセットされたり、連絡先情報が変更されたりすることもありました。そこでチームは、最近行われたパスワードのリセットや連絡先の更新のパターンを分析し、自動化機能によって効果的に検出および対処できる挙動を特定しました。
「私たちは、このプロセスを自動化するにはどうすればよいかを検討しました。具体的には、セキュリティチームにアラートを送信し、パスワードリセットの背後で何が起きているのかを詳しく調査して、攻撃を阻止できるようにしたいと考えていました」と、Finney氏は説明します。セキュリティチームは、Splunkの自動化機能を使ってアラート通知をヘルプデスクに振り分けることで、脅威への対応と修復作業をよりすばやく行えるようにしました。
さらなるメリットとして、Splunkを導入した早い段階で、日常的な管理業務に費やす時間が週あたり25%削減され、その結果、組織の成長につながる重要な調査や付加価値の高い業務に専念できるようになりました。
Splunk Cloudは、Finney氏とチームに新たな可能性をもたらしました。チームは、さまざまなソースから新しいデータストリームを取得して処理し、これまで以上に高精度なテレメトリデータを活用しています。そして、これらのソースをもとに、日々優れたデータモデルを構築しています。
また、チームは新たな脅威も特定しています。Splunkを活用することで、単一のイベントを起点として横方向に分析できるため、組織全体を俯瞰しながら、類似のインシデントを検出したり、アクティビティを相関付けたりして、潜在的なサイバー脅威や異常を完全に特定できるようになりました。しかも多くの場合、アラートを受け取ってから15分以内に対応できます。
ただし、新しいアラートが多数発生するようになると、チームは対応戦略の見直しや強化を図るとともに、トレーニングへの投資を継続し、イベントの解釈においてメンバーが同じ認識を持てるようにする必要があると、Finney氏は指摘します。「これらのイベントは、患者や患者ケアと極めて密接に関わるさまざまなシステムに影響を与える可能性があります。場合によっては、臨床現場で患者対応を行っているスタッフにも、連絡を取らなければなりません。個人のノートPCとは異なり、臨床関連のシステムでは、より高度なエスカレーションが求められます」とFinney氏は言います。
Children's National Hospitalのセキュリティ運用チームにとって、可視性の向上と脅威検出の強化は、取り組みの第一歩に過ぎません。Finney氏は、Splunk SOARでAIを活用することで、さらに幅広いデータにアクセスし、分析の予測精度を高めるためのアルゴリズムを構築できるようになると期待を寄せています。
同院では、Splunkがすでにセキュリティの中核を担っており、セキュリティチームの予防、検知、対応といった戦略の要となっています。しかし、将来的に大規模なサイバー攻撃が発生する可能性を見据え、Splunkプラットフォームを活用して、特定の部門に特化したセキュリティユースケースや攻撃シナリオを構築しておくことが重要だと、Finney氏は述べています。「私は、Splunkを車輪の中心のようなものだと考えています。ここから病院内の他のツールに情報を伝達し、さまざまな部門やエリアのスタッフが特定のインシデントに迅速に対応できるよう支援したいのです」と、同氏は言います。「Splunkがあれば、病院内の特定のシステムを停止する必要が生じた場合でも、適切な措置を実行し、それを関係者に迅速に通知できる体制を整えることができます」