日本のSplunk SE(ソリューションエンジニア)チームの有志で、Splunkを利用されるエンジニアの方に向けた技術書籍を執筆させていただきました。C&R研究所から発行されているこちらの書籍は、海外で英語で執筆されたものを翻訳したのではなく、日本のSEメンバーがこれまで日本のお客様やパートナー様向けにご提供してきた技術情報を分かり易く解説したものになっています。
こちらのブログでは、私が担当させていただき、本の冒頭にも掲載されている内容を引用する形で、宣伝、ご紹介をさせていただければと思います。
現代のITシステムは、ますます複雑化し、広範囲にわたる分散型のネットワーク、クラウド環境、サーバー、アプリケーションなどが相互に依存しています。企業の成長に伴い、これらのシステムを監視し、管理することがますます重要となっています。しかし、どれだけ技術が進化し、システムが堅牢になっても、予期しない障害やサイバー攻撃のリスクから完全に免れることはできません。そのため、企業はデジタルレジリエンス(デジタル的な回復力)を高め、システムの可用性やセキュリティを保つための対策を講じなければなりません。
デジタルレジリエンスとは、企業がテクノロジーを駆使して、障害やサイバー攻撃、システムの不具合などの予期しない事態に迅速に対応できる能力を指します。システムが常に完全であるわけではなく、技術的な問題や外部からの攻撃、さらには人的ミスなどが原因で予期しない事態が発生することは珍しくありません。重要なのは、こうした問題が発生した際にどのようにして迅速に復旧し、ビジネスの継続性を確保するかです。デジタルレジリエンスが欠如していると、サービス停止や情報漏洩、さらには企業の信頼性に重大な影響を及ぼす可能性があります。
Splunkは、こうしたデジタルレジリエンスを支える強力なツールです。Splunkは、発生した事象に組織が迅速に反応できるように、膨大なデータをリアルタイムで収集、分析、可視化する能力を提供します。これにより、問題が発生した際には素早く根本原因を特定し、修正するための手がかりを得ることができます。Splunkは単にシステムの復旧を支援するだけでなく、インシデントを未然に防ぐための重要なツールとしても機能します。
Splunkは、2003年に米国サンフランシスコで設立されました。その後、2012年に米国ナスダック市場に上場し、同年、日本法人も設立されています。2023年に、シスコシステムズによるSplunkの買収が発表され、現在(2025年)はシスコの一事業部のような形で運営されています。日本国内におけるSplunkの利活用も、業種を問わず年々増えてきています。ユースケース(活用領域)も、当初はログの分析ツールから始まりましたが、最近はグローバルで利用されるSOC(Security Operation Center)のプラットフォームや、AIを活用したデジタル・サービスの高度な監視といった部分でも活用が広がってきています。
Splunkの特徴として、一度設計、構築したものをそのまま変更せずに運用するのではなく、お客様の要件に応じてアジャイルに見直しをしながら、そしてユースケースを拡大いただくことで、より幅広い課題の解決や高い投資対効果(ROI)を得ることができます。つまり、単なる導入だけではなく「使いこなしていただくこと」こそが、Splunkの有効活用における本質と言えます。一方で、実際に現場の方が必要とするSplunkの技術情報に関しては、まとまった形では日本語化されていないのが実態です。多くのお客様やシステム・インテグレーターにお勤めのエンジニアの方々は、トレーニング資料や現場で集めた情報をベースに、さらには英語の情報も検索しながらSplunkを試行錯誤しながらご利用いただいています。このような状況を少しでも改善するために、今回、Splunk日本法人の有志を募ってSplunkの技術書籍を執筆することにしました。
本書の目的は、Splunkを使ってデジタルレジリエンスを高め、セキュリティを強化し、オブザーバビリティを向上させるための実践的な方法を提供することです。Splunk初心者をはじめ、SOCやSIRTのメンバー、IT運用管理チームの担当者に向けて、具体的な事例や手順を通じて、Splunkをどのように活用するかを解説します。
本書では、Splunkの基本的な使い方から、セキュリティイベントの検出、運用管理の効率化、さらにAIを活用した高度な技術に至るまで、幅広いトピックを扱います。読者は本書を通じて、Splunkを利用してシステムの健全性を監視し、障害の早期発見と対応、セキュリティ強化の方法を習得することができます。
これからのデジタル時代において、企業のシステム運用とセキュリティはますます重要性を増しています。本書が、読者の皆様の企業におけるデジタルレジリエンスの向上、セキュリティの強化、そしてオブザーバビリティの改善に役立つ一助となることを願っています。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。