.conf25において、Splunkは、MachineGPTのコンセプトを打ち出すことで大胆な一歩を踏み出しました。MachineGPTは、特に見落とされがちなリソースの1つであるマシンデータに生成AIのパワーをもたらします。MachineGPTは機械の言語を理解します。ChatGPTが単語や文法を学習して、人間の言語による質問を理解し、人間の言語で回答を返すのと同じように、MachineGPTは、システムの動作を示すマシンデータの隠れた「文法」を学習します。
マシンデータは、あらゆるシステム、アプリケーション、デバイスから排出されるデジタルデータです。これらのログ、メトリクス、トレース、イベントは、いわばデジタルの鼓動であり、ビジネスに活力を与え、経済を形作るシグナルと言えます。AIの第一波が人間の言語を解き明かしたように、次の波は機械の言語を解き明かし、ITチームに革新的なツールをもたらすでしょう。
Splunkの伝統は、マシンデータをいかに制するかに深く根ざしています。データがかつてないスピードで増え続ける今日、Splunkの基礎をなす専門知識がこれまで以上に重要になっています。
マシンデータは昔から、トラブルシューティングで中心的な役割を果たしてきました。今日でも、障害をさかのぼって原因を調査したり、コンプライアンスを証明したりするために使われています。しかしそれは、すでに起こった出来事を時系列で探る事後対応的なプロセスであり、これから起こることにプロアクティブに対応するものではありません。その状況を一変させるのがMachineGPTです。機械の言語の隠れた文法と構造を学習して、ノイズを情報に変えます。
デジタル世界の鼓動を刻むデータを制することはゲームチェンジャーとなります。車両の安全を守るセンサーデータ、小売店の円滑な運営を支えるトランザクションデータ、グローバルな銀行業務のセキュリティを確保する認証パターンなどを考えてみてください。MachineGPTは、これらのデータを取り込んで、異常のわずかな兆候を検出し、複数ドメインにまたがるシグナルを相関付けて時系列に並べ、状況をシミュレートします。さらに、オーケストレーションによる自動対応も可能になるでしょう。このようにMachineGPTは、機械の声に耳を傾けるだけでなく、機械を理解し、人間と協力して顧客に真のビジネス価値を提供するAIを実現します。
AIOpsは始まりに過ぎません。AIOpsでは、事前定義されたモデルと特定のユースケースを主に使用してインサイトを獲得しますが、それは通常、事後的な情報です。MachineGPTは、事後的なインサイトから先見的なインサイトへの転換を促進します。MachineGPTでは、サイロ化されたデータをつなぎ合わせ、推論を適用できます。さらに、組織の運用基盤にエージェンティックAIを組み込んで、マシン並みのスピードで極めて大規模に検出と診断、計画と実行を可能にします。これは単なる運用効率の向上にとどまりません。機械の言語を取り入れたレジリエンスの強化です。
MachineGPTの導入を加速させるために、私たちは、インフラ、アプリケーション、セキュリティ、ビジネス運用全体でテレメトリを大規模に統合するAI対応アーキテクチャ「Cisco Data Fabric」を開発しました。Cisco Data Fabricではマシンデータにコンテキストが補強され、組織は独自のデータを使って基盤モデルをファインチューニングできます。
ここで重要なのが「ファブリック」という言葉です。これは、多様なソースのデータを統合して一元的に表示するということを意味しています。従来の中央集権的なリポジトリに代わって、あらゆる場所に存在するデータを結びつけ、リアルタイムで実用的な情報に変える、適応性に優れたAI対応基盤を提供します。Cisco Data Fabricでは、あらゆる場所のデータをインテリジェントに統合することでこのアプローチを実現します。このようなデータ統合は、セキュリティ、IT運用、ビジネス運用をまたぐ単一の信頼できる可視化レイヤーを形成し、戦略的資産になります。また、Cisco Data Fabricでは、時系列データに高度なパターン分析や時間的推論を適用することもできるため、高度なアノマリ検出、予測、自動化された根本原因分析も可能になります。
これらの機能により、プロアクティブな運用、盲点の排除、意思決定の迅速化が進み、リアルタイムの対応が実現します。また、品質チェックとセキュリティコンプライアンスを通じてAIエージェントのコンテキストに沿った動作とその精度を保証することで、ガバナンスと信頼性を確保できます。そして最終的には、インシデントへの事後対応から脱却し、プロアクティブにビジネス成果を追求するための体制を構築できます。
MachineGPTの潜在能力を最大限に引き出すには、運用に関するインサイトにとどまらず、ビジネスインテリジェンスと連携させることが重要です。運用への影響を理解することは価値を生み、ビジネスへの影響を理解することは変革を生みます。これを実現できれば、収益面でのメリットも実感することになるでしょう。
Snowflake社とのパートナーシップが非常に重要になるのはそのためです。Splunk Federated Search for Snowflakeを使えば、情報を移動または複製することなく、SplunkのマシンデータとSnowflake社のAIデータクラウドのビジネスデータを統合的にサーチして相関付けることができます。
この統合により、新たなインテリジェンス基盤が構築されます。たとえば、認証ログで異常が検出されたときに、特定の顧客のトランザクションと即座に相関付けたり、システムのパフォーマンスが低下したときに、その原因をプロモーション活動と直接関連付けたりできます。このように、検出を強化し、計画の幅を広げ、対応の正確性を向上させることが可能になります。最終的には、ビジネスや顧客にプラスの効果をもたらして、より優れた成果を達成できるでしょう。
MachineGPTの真価は、それがもたらす成果にあります。小売企業であれば、顧客が気づく前に問題を修正する自己修復機能を備えた決済システムを構築できます。自動車メーカーであれば、保証違反がリコールに発展する前に問題を予測できます。金融機関であれば、サイロ化した検出システムでは見つけられない不正行為のパターンを検出できます。これらは未来のシナリオではありません。マシンデータを単なるデジタル排出物ではなく戦略的資産として活用できるようになったとき、つまり、AIが過去の出来事を説明できるだけでなく、未来を予測してその形を描き出すことができるようになったときのビジネスの姿です。
世界は今、AIの新しい時代に入りつつあります。第一波は人間の言語を理解することでした。そして次の波は、機械の言語を操ることです。
MachineGPT、Cisco Data Fabric、そしてSnowflake社とのパートナーシップを通じて、Splunkは明日のデジタル経済の基盤を形作っています。私たちはデータを先見的なインサイトに変えます。データによって可能性が切り開かれる世界において、組織が迅速に行動し、大胆にイノベーションを進め、永続的な価値を創造できるように支援します。
取り組みを果敢に進めることで、AIの実用性をさらに高め、エージェンティック時代のデジタルレジリエンスを構築しましょう。私たちのチームとお客様が、マシンデータの潜在能力を解き放つために行っているすばらしい取り組みを誇りに思います。そして、その取り組みはまだ始まったばかりです。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳、前園 曙宏によるレビューです。