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リアルユーザー監視(RUM)とは?

リアルユーザー監視(RUM)は、アプリケーションのパフォーマンス管理においてエンドユーザーエクスペリエンスを測定するために使用される手法で、エンドユーザー監視、またはエンドユーザーエクスペリエンス監視とも呼ばれます。リアルユーザー監視は、エンドユーザーのタイミング、エラー、ディメンション情報をリアルタイムで受動的に収集して分析することで、Webサイトやアプリケーションのユーザーエクスペリエンスを可視化します。開発者はこれを使用して、自分のコードがどのようにページのパフォーマンスやユーザーエクスペリエンスに影響しているかなど、さまざまなパフォーマンスの問題を理解することができます。

リアルユーザー監視では可用性のみを測定するシンプルなアップタイム/ダウンタイムの監視とは異なり、カスタマーエクスペリエンスを包括的に把握できます。たとえば、eコマースのWebサイトで、ホームページは表示されているがコンテンツや画像の配信が遅い、またはユーザーのクリックやキー操作の処理に時間がかかるといったことが起こり、その結果ユーザーがページから離れてしまうことがあります。リアルユーザー監視は、Webサーバーが最初のHTMLドキュメントを送信した後のカスタマーエクスペリエンスをキャプチャします。この情報がなぜ重要かというと、エンドユーザーの待ち時間の80~90%は、バックエンドではなく、クライアント側(Webブラウザ)で発生するためです。

ユーザーエクスペリエンスを理解して最適化し、管理者が問題を常に把握することで最終的にビジネス目標の達成につなげるという目的から、リアルユーザー監視ツールの重要性はますます高まっています。以下のセクションでは、リアルユーザー監視の仕組みとその重要性、実際の導入方法について説明します。

リアルユーザー監視とは:目次

その他のリソース

アプリケーションパフォーマンス監視とは

アプリケーションパフォーマンス監視(APM)は、アプリケーションやWebサイトをスムーズかつ効率的に機能させるための手法です。APMツールは、アプリケーションのパフォーマンスと可用性を監視し、サービスが中断する可能性がある場合にアラートを発します。これらのツールは、さまざまな監視ソリューションを備えています。

  • リアルユーザー監視:クライアント側でのエンドユーザーのパフォーマンスエクスペリエンスを測定します。一般には、フロントエンド全体にわたり、ページ読み込みの状態や操作性、表示の安定性、エラーを測定します。
  • 外形監視:ユーザーの行動をシミュレートして、アップタイムやパフォーマンスをプロアクティブに測定します。測定は、通常、重要なサービスのエンドポイントなどで行われます。
  • IoT監視:モバイルデバイスやその他の接続デバイス上にあるアプリのパフォーマンスの問題を特定し、修正するのに役立ちます。
  • データベース監視:データベース関連のパフォーマンスの問題を診断して対応するためのメトリクスを追跡します。
  • インフラ監視:アプリケーションを確実にサポートするために、アプリケーションの基盤となるインフラからデータをプロアクティブに収集し、インフラの問題をエンドユーザーに影響が及ぶ前に特定します。
  • サーバー監視メモリ使用量、CPU使用量、スループットなど、インフラ関連のメトリクスを収集し、アプリケーションやWebサーバーのパフォーマンスを把握します。
  • ネットワーク監視オンプレミスやSaaSの環境を可視化し、ネットワークの状態がアプリケーションのパフォーマンスにどのような影響を与えているかを示します。
  • クラウド監視:クラウドベースのインフラと資産の健全性を判断するため、メトリクスをプロアクティブに収集し、分析します。
  • ストレージ監視:物理ストレージまたは仮想ストレージデバイスのパフォーマンス、可用性、全体的な健全性を監視します。
  • IT監視:IT機器がオンラインであるかどうか、期待されるサービスレベルで動作しているかどうかをアナリストが判断しながら、検出された問題を解決できるように設計されたさまざまな製品で構成されています。

最新のDevOps環境では、APMを使用することで、DevOpsチームがボトルネックをすばやく発見し、アプリケーションに関する問題のトラブルシューティングや切り分けをより簡単に行うことができるため、APMはソフトウェア開発プロセスの重要な一部となっています。

アプリケーションパフォーマンス監視の図 アプリケーションパフォーマンス監視の図

APMでのリアルユーザー監視の役割

デジタルエクスペリエンス監視が重要な理由

デジタルエクスペリエンス監視(DEM)には、リアルユーザー監視と外形監視の両方が含まれており、ユーザーエクスペリエンスやページのパフォーマンスの測定、改善、最適化が行えることから、組織にとって重要な役割を果たしています。調査によると、パフォーマンスが非常によいサイトでは、一般的に収益やコンバージョン、ユーザーエンゲージメントが高いことが明らかになっています。

ほとんどの組織が、アプリケーションのエクスペリエンスは常に向上させていかなければならないということを理解していますが、その実践には苦戦しています。問題が発生してからアプリケーションのユーザーエクスペリエンスを改善しようとすると、多大な費用がかかることが少なくありません。Splunkの調査によると、パフォーマンスの低さが原因でアプリケーションの使用をやめたと回答したユーザーは90%に上っています。エンドユーザー監視では、Webアプリケーションの問題をエンドユーザーから直接教えてもらうのを待つのではなく、組織がユーザーのアプリケーションの操作やトランザクションを監視することで、アプリケーションのパフォーマンスをプロアクティブに把握することができます。

リアルユーザー監視と外形監視には、それぞれ利点と制限があります。外形監視は、実際のユーザーではなく行動スクリプトを使用するため、ユーザーに影響を及ぼす前に、潜在的な問題を発見し、修正するのに適しています。ただしこれは、実際のユーザーがアプリケーション内で見たりするものや行ったりすることの近似値でしかないため、現実世界のすべてのエクスペリエンスを把握できないという欠点があります。それに対して、リアルユーザー監視は、人間のユーザーがアプリケーションやサービスをどのように使用しているかを正確に表示します。しかし、問題に対処するためには、少なくとも1人のユーザーに対し問題が発生するのを待たなければなりません。

このような違いから、外形監視は、本番前環境でアプリケーションやWebサイトを監視し、本番前に問題を把握して、ベースラインとなるパフォーマンスを確立するのに最も効果的であるといえるでしょう。本番稼働後は、リアルユーザー監視を使用して、Webサイトやアプリケーションが実際のユーザーにどのように影響しているかを可視化することができます。

外形監視の仕組み

外形監視は、ユーザーフローをエミュレートする行動スクリプトでユーザーのトランザクションをシミュレートし、重要なエンドポイントやユーザージャーニー全体の可用性、機能の状態、パフォーマンスを測定します。この技術は、人工的なユーザーエクスペリエンスを段階的に進めていくため、プロアクティブな監視に分類されます。一方、リアルユーザー監視は受け身型の監視と見なされます。具体的には、外形監視は次のように機能します。まず、管理者(SLAのアップタイムを担当するチーム)が、いくつかのチェックポイントを定義し、パフォーマンスメトリクスを選びます。その後、ロボットクライアントが、アプリケーション内で事前定義されたユーザージャーニーをたどり、人間の行動を模したトランザクションをシミュレートして、ページの可用性(URLの反応があるか)、機能(すべてのボタンが動作したか)、パフォーマンス(ページリソースの読み込み速度)の情報を返します。通常は、重要なサービスのエンドポイントが停止した場合にアラートを通知するように設定して、インシデント対応をトリガーするようにします。

基本的なアップタイム(Webサイトは稼働しているか)、パフォーマンス(現在のサイトの速度はどのくらいか)、継続的なコードの改善(最近のリリースでユーザーエクスペリエンスが向上したか)など、さまざまな質問に対する答えを外形監視が収集する情報から得ることができます。

外形監視に固有の利点がいくつかあり、それによりチームは以下のことを行えるようになります。

  • ユーザーに影響が及ぶ前に問題を特定して対処:人間のユーザーによる操作が必要なリアルユーザー監視とは異なり、24時間365日いつでも、少ないトラフィック量で使用することができ、本番環境にコードを展開する前のテストにも利用できます。このプロアクティブなアプローチのおかげで、ユーザーが気付く前に問題を特定してトラブルシューティングを行い、問題を解決するための時間的な猶予がもたらされます。
  • パフォーマンスベースラインの作成:ページがコンテンツを読み込む速度、操作性、表示の安定性、エラー数などの情報に加え、以前のビルドやリリース、競合他社と比較した場合のパフォーマンスの傾向など、ユーザーエクスペリエンスの重要な要素を測定することで、ページのパフォーマンスをベンチマークし、パフォーマンスの改善につなげることができます。
  • ユーザートランザクションとビジネスプロセスの監視:さまざまな地理的な場所からの検索、フォーム入力、ログイン、その他のトランザクションのWebパフォーマンスをエミュレートして監視することができます。また、こうしたプロセスのパフォーマンスデータを地域間で比較することで、どの場所をどのように改善すべきかがわかります。
  • 新機能のテスト:本番前に新しいアプリケーションの機能をテストし、負荷がかかった状態でどのように反応するか、変更がサードパーティのAPIにどう影響するかなどについて、確認できます。
  • 平均修復時間(MTTR)の短縮:MTTRはサービスを修復して機能を回復するまでにかかる平均時間を表します。影響を受けたサービスのMTTRが短いほど、ビジネスに悪影響を与える可能性は低くなります。外形監視では、ユーザーが影響を受ける前に問題に対処することができ、さらに、外形監視からのアラートがより大規模なインシデント対応を調整するきっかけとなることが多いため、MTTRを短縮するための効果的なツールといえるでしょう。 

外形監視はWebサイトやアプリケーションのユーザーエクスペリエンスを理解するための有効な方法であるものの、現実世界のすべてのシナリオをシミュレートできるわけではありません。そのため、Webアプリケーションを実際に使用しているすべてのユーザーエクスペリエンスを把握するには、リアルユーザー監視が必要となります。

リアルユーザー監視の仕組み

リアルユーザー監視は、RUMツールを介してエンドユーザーのブラウザから直接、アプリケーションやWebサイトのパフォーマンスメトリクスを収集します。一般に、リアルユーザー監視プロセスは、JavaScriptのスニペットをWebページのヘッダーに追加することで機能します。リアルユーザー監視を導入すると、ページの読み込みにかかる時間や、サーバーが最初のHTMLファイルを送信するのにかかる時間など、Webサイトやアプリケーションのユーザーエクスペリエンスに関する重要な質問の答えを得ることができます。また、以下のような、より大きな動向についてのインサイトも得られます。

  • ユーザーの環境:ユーザーは最適なエクスペリエンスを求めて、さまざまなデバイス、OS、ネットワークからWebサイトやアプリケーションにアクセスします。リアルユーザー監視では、ユーザーのニーズをより明確に把握できます。
  • Webサイト内の移動方法:ユーザーがWebサイトやアプリケーション内をどのように移動しているのかを把握して、ユーザーが最初に訪れる可能性の高いページや、クリックストリームの重要なポイントを最適化できます。
  • サードパーティのスクリプトのパフォーマンス:サードパーティのスクリプトは、収益を生み出したり、ユーザーデータを収集したりするうえで大きく貢献しますが、スクリプトの動作が遅いと、ページのパフォーマンスを低下させたり、完全に機能しなくなったりする可能性があります。リアルユーザー監視を使用することで、これらのスクリプトがページのパフォーマンスに与える影響を可視化できます。
  • Webサイトのパフォーマンスとビジネス成果:時間は貴重です。リアルユーザー監視により、Webサイトの速度とパフォーマンス、そしてビジネス成果の間の相関関係を測定することが可能になります。ページのパフォーマンスを正確な収益増加に基づいて定量化するには適切な技術と精度が必要ですが、WebサイトのパフォーマンスをDevOpsプロセスに組み込むと、多くの場合、そのWebサイトではユーザーのエンゲージメントとコンバージョンが増えるという恩恵が得られます。

リアルユーザー監視ツールは膨大な数のユーザーから大量のデータを収集するため、一般に、チャートやグラフなどのデータの可視化機能で情報やインサイトを簡単に把握できるようにしています。また、ダッシュボードによって、ページの読み込み時間やトップページなどのメトリクスが直感的に理解できるかたちで可視化されます。各ユーザーセッションの詳細を確認し、特定のデジタルジャーニーのパフォーマンスが平均に満たななかった場合はその根本原因を探り、改善する方法をドリルダウンすることもできます。

リアルユーザー監視のベストプラクティス

リアルユーザー監視を最大限に活用するには、いくつかのベストプラクティスに従う必要があります。

  • Webサイトのパフォーマンスのベンチマークを確認する:Webサイトやアプリケーションについて期待通りのパフォーマンスを得るには、そもそもどこから着手すべきかを知る必要があります。速度はカスタマーエンゲージメントの向上につながるため、サイトの読み込み時間、直帰率その他のリアルユーザーメトリクスのベースラインを把握して、改善が必要な箇所を見極めます。
  • パフォーマンスの改善点を定義する:それらの数字を確認したら、どのベンチマークが問題点、そして改善点を示しているかを判断します。たとえば、ページの読み込みに3秒かかるとユーザーがサイトから離脱することがわかった場合、読み込み時間を2秒以下にすることを目指します。
  • パフォーマンスをビジネスに結び付ける:リアルユーザー監視は、たとえばコンバージョン率を3%から5%に向上させたいなど、常に具体的なビジネス目標と結び付けるかたちで行うとよいでしょう。そして、パフォーマンスメトリクスを追跡して、その目標に照らして進捗状況を判断していくようにします。

リアルユーザー監視(RUM)の導入方法

リアルユーザー監視では、ユーザーデータを追跡、収集、分析するようにページを準備し、それらのデータをまとめて実用的なレポートを作成するために、サードパーティのソリューションを使う必要があります。リアルユーザー監視ツールの選択肢は無数にあるため、ツールを検討する際は、次の質問について自問してみましょう。

  • どのような機能が必要か?すべてのリアルユーザー監視ツールが同じ機能を提供しているわけではありません。また、企業にはそれぞれ異なる監視ニーズがあるため、まずツールで何を実現したいのかを明確にすることが重要です。

    少なくとも、リアルユーザー監視ツールには、ユーザージャーニーを把握し、直帰率、カート放棄率、コンバージョン率などのユーザーエンゲージメントメトリクスを追跡し、ビジネスにとって重要な独自のメトリクスを設定して収集できる機能が必要です。

    最終的に、リアルユーザー監視ツールは、組織がパフォーマンスを評価するだけでなく、それを最適化できるものでなければなりません。そのためには、最適化が必要なプロセスを特定し、ユーザーのブラウザ、デバイス、OS、位置情報などのデータを取得し、パフォーマンスの傾向やサービス停止を検出し、パフォーマンスインシデントをチームにアラートしてMTTRを短縮できるツールを探します。
  • 導入は簡単か?リアルユーザー監視ツールを購入する前に、使用しているWebサイトやアプリケーションに簡単に統合できるかどうかを確認しましょう。サポート対象のハードウェアやソフトウェアなど、導入の前提条件を確認します。また、モバイルアプリ用のソフトウェア開発キット(SDK)が用意されているかどうかについても確認します。アプリやWebサイトのページが特に複雑な場合は、カスタマイズが必要になるかもしれません。
  • 統合型の監視またはスタンドアロンのどちらにするか?リアルユーザー監視ツールを、アプリケーションパフォーマンス監視やその他のパフォーマンス監視ソリューションなどのツールと組み合わせて使用すれば、アプリケーションやWebサイトのパフォーマンスをより包括的に把握できます。あるいは、ビジネスに最も適したツールのみを選択して、監視戦略を合理化し、カスタマイズするという方法もあります。
  • ツールはどのようにデータを処理するか?リアルユーザー監視ツールごとに、データの収集と管理の方法はそれぞれ少しずつ異なります。そして、これらの違いは監視戦略に対し大きく影響します。データを長期的に保存する場合、過去と現在のトレンドを確認でき、より有用な分析が得られます。ツールによって、すべての顧客の訪問をキャプチャしてレポートしたり、特定の数の訪問のみをキャプチャしてレポートしたりと、まちまちです。重要なのは、ツールの違いを理解し、それが自社のビジネスニーズにどのように関係するかを認識することです。
  • データをどのように表示、レポートするか?監視で得たインサイトを行動に変えるに当たり、パフォーマンスレポートとデータの可視化は重要です。レポート機能はリアルユーザー監視ツールの最も重要な機能の1つであるといえるでしょう。包括的なレポートには、ユーザーの位置情報、ネットワーク、ISP、デバイスなどを含む複数のパラメーターに基づいてデータをグループ化できるツールが必要です。また、カスタマイズされたメトリクスに基づくデータのグループ化もできなくてはなりません。
  • ライセンス条件はどのようなものか?単体で使用する場合でも、他の監視ツールと併用する場合でも、リアルユーザー監視を最大限に活用するにはライセンスオプションを正しく理解することが欠かせません。ベンダーによっては、リアルユーザー監視ソリューションをスタンドアロンで提供していたり、外形監視と組み合わせたり、あるいはパフォーマンス監視ツールスイートの一部として提供していたりします。自社の監視ニーズを理解して、最も費用対効果の高いソリューションを選びましょう。

結論:優れたカスタマーエクスペリエンスにはリアルユーザー監視が必要不可欠

サービスを利用する顧客は誰しも、快適なエクスペリエンスを求めています。ページの読み込みが遅かったり、不完全だったり、あるいはトランザクションエラーその他の問題が発生したりすると、単にユーザーをいらだたせるだけでなく、ユーザーエクスペリエンスを台無しにして、自社のビジネスのイメージを永遠に損ねてしまう可能性があります。リアルユーザー監視は、他のツールにはできないかたちで、優れたカスタマーエクスペリエンスの実現を妨げる要因を明確にします。それにより、サイトやアプリケーションのパフォーマンスを最高度に維持することが可能になり、顧客のリピート率の向上につながります。

参考リソース: