クラウドやIT投資などにおける資本コストと運用コストの比較
IT Stephen Watts要点
- 定義と違い:資本コスト(CapEx)とは、時間の経過に従って減価償却される有形資産(建物や設備など)への多額の長期投資などを指します。一方、運用コスト(OpEx)とは、発生した年に全額が控除される継続的な経常費用(賃借料や光熱費など)を指します。
- IT投資への影響:企業は、IT投資を行う際に資本コストモデルと運用コストモデルを戦略的に選択する必要があります。資本コストモデルには資産を完全にコントロールできるというメリットがありますが、多くのITサービスがクラウドベースのサブスクリプションモデルに移行し、柔軟性やコストの予測可能性に優れた運用コストモデルの優位性が高まっている中で、モデルを戦略的に選択することの重要性はとりわけ増しています。
- 今後のトレンド:俊敏性に優れ、使用状況に合わせてコストを調整できることから、IT投資において運用コストモデルを選ぶ傾向が高まっており、多くの組織が資本コストと運用コストの両方を組み合わせてIT予算を最適化するハイブリッド戦略を採用するようになっています。
資本コストと運用コストは、組織の経費を分類する2つの方法です。どの組織でも、オフィスの賃貸料からITインフラのコスト、従業員の賃金まで、さまざまな費用が発生します。会計を簡素化するために、費用を異なるカテゴリに整理しますが、そのうち最もよく用いられるカテゴリが資本コストと運用コストの2つです。
大まかに言えば、資本コストは、現在の会計年度を超えて企業の価値を高めるための購入によって発生します。資本コストはほとんどの場合、売上原価か、土地、建物、機械、車両など、組織の事業運営や長期的な財務健全性にとって重要な有形資産にかかる費用です。こうした有形資産の今のビジネス価値を改善、強化するための費用(たとえば、工場の拡張など)も資本コストと見なしてよいでしょう。
運用コストは、日々の業務を支えるために発生する経常費用であり、無形資産であることがほとんどです。こうした資金は通常、会計期間の終了時、または購入された年内に使い切られ、税金から控除される消耗品や契約に費やされます。その他の一般的な運用コストには、オフィスの賃貸料、保険、給与などがあります。
資本コストと運用コストのどちらとして処理する場合であっても、調達にあたっては、入札の実施、プロバイダーとの契約、法的な見直し、購入品の支払いと受領の調整など、同じようなプロセスを踏むことが多いでしょう。しかし、会計処理における資本コストと運用コストの扱いは大きく異なります。運用コストは、発生した年に税金から全額控除できます。一方、資本コストは減価償却されるため、予想される耐用年数にわたって控除しなければなりません。たとえば、10,000ドルで購入した資産は、予想耐用年数が5年の場合、1年に2,000ドルずつ減価償却することになります。
このブログ記事では、資本コストと運用コストそれぞれに該当する品目や計算方法、そして自社に最適な資本コストと運用コストの戦略の策定方法について説明します。
資本コストと運用コストを理解する
資本コストと運用コストはIT投資と予算に大きな影響を与えるため、両方の会計モデルを理解することが重要です。IT部門と財務部門は、オンプレミスのコストとクラウドのコストを仕分ける最適な方法と、予算を最大限に活かせるようITコストを資本コストへの計上から運用コストへの計上にシフトすべきタイミングを判断する必要があります。
不動産や原材料といった、資本コストに該当する品目の購入では、多額の費用を前払いする必要がありますが、耐用年数にわたって減価償却されるため、会計上の予測可能性をある程度確保できます。資本コストモデルのプロジェクトの場合、すべてを自社の裁量で決められるというメリットもあります。たとえば、自社のデータセンターに投資した場合、その実装方法と使用方法を完全にコントロールでき、市場の需要の変化に合わせてインフラを変更する際の障害もありません。
しかし、資本コストモデルによるテクノロジーの購入には難しさもあります。多額の先行投資を行うには、今後数年間の組織のニーズを予測する必要があります。たとえば、物理サーバーの購入は典型的な難題です。変化の激しいビジネスワークフローに対応するために、どれくらいのストレージ容量が最適なのか、いったいどのようにしたら判断できるでしょうか。少なく見積もると、ストレージを再び増やすためにより多くの資金を支出しなければならなくなります。多く見積もると、使用していないサーバーに資金を使い過ぎてしまうことになります。また、テクノロジーのライフサイクルはペースが速く、進化し続けるものであるため、ハードウェアを購入してからわずか数カ月または数年で陳腐化し、交換するためにまた多額の資金を支出しなければならなくなることもあります。
一方、運用コストモデルによる購入は、初期費用が比較的少なくて済み、使用した分に対してのみ支払うため、長期的にコストを削減できます。たとえば、クラウドデータストレージを利用すると、ストレージを月単位で購入し、必要に応じてスケールアップまたはスケールダウンできるため、将来的にどれだけの容量が必要になるかを推測して見積もる必要がありません。また、運用コスト扱いで購入するものは、たいてい従量課金制モデルで支払うことになるため、より多くの現金を手元に保持し、経常費用の見通しを立てやすい仕組みを構築して、純利益との整合性を保つことができます。
資本コストの項目と運用コストの項目は、それぞれ異なる予算に計上され、承認プロセスも異なります。資本コストとして計上される設備投資の多くは規模が大きいため、購入するには、通常、複数のプロセスを経て経営陣の承認を得る必要があります。これは、多くの組織において時間のかかるプロセスであり、結果的に調達が大幅に遅れる場合があります。対照的に、運用コストとして計上されるものは、経常費用の予算に組み込まれている限り調達できます。
ハードウェアやソフトウェアを所有する従来のモデルの場合、ITインフラストラクチャの費用の大部分(サーバー、ネットワークハードウェア、データセンター施設など)は、1年以上にわたって組織で運用する予定の高額な購入であるため、資本コストに分類されます。しかし、「as-a-Service」モデルへの移行が進むにつれ、多くのITコストを運用コストにシフトする方がより合理的になっています。そうすることで、コストを長期間にわたって分散させ、予算編成の予測可能性を高めることができます。資本コストモデルと運用コストモデルの影響を理解することで、2つのモデルを戦略的に採用し、IT予算を最大限に活用することが可能になります。
資本コストと運用コストの計算方法
資本コストは、自社の損益計算書と貸借対照表を使用して計算できます。まず、損益計算書で減価償却費と償却費を確認し、貸借対照表で当期と前期の有形固定資産を確認します。次に、以下の式を使用して資本コストを割り出します。
資本コスト=当期の有形固定資産-前期の有形固定資産+当期の減価償却費
この計算式は、当期の有形固定資産の額は、前期の有形固定資産額に新たな資本コストを加えたものから減価償却費を差し引いたものに等しいことを示しています。
運用コストの計算は、はるかに簡単です。一定期間に生じたすべての運用コストを合計するだけです。運用コストの式は、たとえば次のようになります。
運用コスト=賃料+保険料+消耗品費+ライセンス料+弁護士費用+マーケティングと広告費+給与と賃金+修理と設備のメンテナンス費+税金+交通費+光熱費+車両費用
資本コストは、自社の損益計算書と貸借対照表を使用して計算できます。運用コストを計算するには、一定期間に生じたすべての運用コストを合計します。
資本コストに含まれるもの
資本コストには、土地、建物、設備、その他の商品やサービスの購入、維持、改善などの固定資産が含まれます。一般に、1回限りの購入で、購入した年以降も組織に利益をもたらすことを意図している品目は、資本コストと見なすことができます。こうした品目は、購入の翌年以降は既存の資産と見なされます。
IT分野における資本コストには、一般に次のようなものがあります。
- サーバー
- ネットワークスイッチ
- ルーター
- ファイアウォール
- 物理的な工場
- データセンター
- データセンター施設用地
- ユニバーサル電源システム
- エアコン
- 発電機
- コンピューターおよびモバイルデバイス
- プリンター
- ソフトウェアライセンス
会計の観点から見ると、資本コストの支出にはメリットとデメリットの両方があります。資本コストに分類される資産は通常、多額の先行投資を必要とする種類の支出となるため、IT予算をすぐに使い果たして、他の業務領域のキャッシュフローを減少させる可能性があります。ただし、資産の耐用年数は必ず1年を超えるため、減価償却によって費用計上できます。減価償却は通常、購入日から5年〜10年にわたって行われます。土地の場合であれば、減価償却期間が20年以上にわたることもあります。この期間は、組織の課税対象となる収益額が減少するため、支払うべき税金の額も減少します。つまり、減価償却費が大きければ大きいほど、課税年度の課税額は少なくなります。
運用コストに含まれるもの
運用コストとは、組織の日々の事業活動を支える継続的なコストです。運用コストに分類されるものの特徴は、通常、購入年内に使い切られることです。
従来、企業の財務諸表には、次のような項目が運用コストとして含まれていました。
- 賃料
- 固定資産税
- 保険
- 光熱費および通信費
- 修理およびメンテナンス費用
- 賃金と給与
- 事務用品
- マーケティングおよび広告コスト
- 交通費
- 契約(Webサイトのホスティング、Webドメインの登録、年間メンテナンスおよびサービス契約など)
資本コストは、組織に長期にわたって利益をもたらす固定資産の費用です。運用コストは、日々の事業活動を支える継続的な費用です。
しかし、クラウドコンピューティングや自動化の普及、「as-a-Service」の提供によって、多くのIT製品やサービスのコストモデルが変わり、資本コストではなく運用コストとして扱うことがより簡単になりました。たとえば、次のようなものです。
- データストレージ
- SaaS (Software as a Service)
- PaaS (Platform as a Service)
- IaaS (Infrastructure as a Service)
- マネージド型ITサービス
- マネージド型セキュリティサービス
会計面では、従量課金制サービスの購入は運用コストに分類され、組織の損益計算書に記録されます。このような品目は、資本コストに分類される品目のように減価償却されるのではなく、次のように収入から差し引かれます。
- コストは、経常費用の予算に割り当てられます。
- 運用コストモデルによる購入で発生する費用は、損益計算書に記録されます。
- 毎月の費用は追跡され、発生時に収益から差し引かれます。
ITの費用を資本コストから運用コストに移行すると、予算編成の柔軟性と予測可能性が大幅に高まります。また、購入した品目の全費用を、購入した年に税金から差し引くこともできます。これにより、一般にビジネスの利益率が向上します。ただし、とかくクラウドに移行すればコストを削減できると言われがちですが、実際にはコストの抑制に役立つと言う方が正確です。たとえば、データセンターをアウトソーシングする方が、自社で運用するよりも、最終的に支出が多くなる可能性がありますが、大きな金額を前払いする代わりに、1回の支払い金額を長期的に小さく抑えながらデータセンターを利用できます。
減価償却は資本コストか、それとも運用コストか
減価償却は、資本コストに該当する品目の費用を耐用年数にわたって配分するために使用される会計方法です。資本コストモデルによる購入は、長期的なニーズを満たす価値の高い品目を対象とし、長期的には元が取れると想定されるため、投資と見なすことができます。こうした品目は何年も使用されるため、一度に税金から控除するのではなく、耐用年数にわたって減価償却する必要があります。減価償却率は資産によって異なり、資産の種類と用途に基づいて決定されます。たとえば、建物は数十年にわたって使用できるため、耐用年数が数年しかないサーバーなどの機器よりもゆっくりと減価償却されます。
資本コストと運用コストのメリットと課題
資本コストは、組織に次のようないくつかのメリットをもたらします。
- 確実性:資本コストに該当する品目の購入にかかる正確な費用を把握できます。品目の初期費用も、長期的にどのように減価償却されるかも明確です。
- 自律性:ハードウェアやソフトウェアを完全に購入するため、実装方法や使用方法を完全にコントロールでき、ニーズや市場の変化に応じてインフラを変更できます。
- 継続性:自社所有の設備に投資する場合、クラウドベースのITサービスを利用する際に直面する可能性のある多くの障害を排除できます。たとえば、サーバーを購入して自社で保有する場合、運用コストとして調達する場合のようにライセンスの更新に対応する必要がありません。
- 長期的な価値:資本コスト扱いで購入するものは、今後何年にもわたってビジネスのニーズを満たし、価値をもたらす投資です。
一方で、資本コストは、次のようないくつかのリスクも伴います。
- 必要以上に購入してしまう:将来のニーズを見越して準備を進める中で、最終的に使用するよりも多くの容量を購入したり、投資の利益を得る前に陳腐化するテクノロジーに対して投資したりするリスクを常に伴います。
- ベンダーに縛られる:ハードウェアに投資して自社で保有すると、事業が特定のベンダーに依存する場合があり、需要の変化にインフラを適応させる必要がある場合や、ベンダーが契約を履行しない場合に、自由に変更できなくなる可能性があります。
- 高いメンテナンス費用が発生する:自社所有の場合、施設や機器の管理により多くのリソースが必要になります。つまり、そうした資産を監視するために人件費を支払うことになります。重要度の高い業務に従事している既存のスタッフを再配置する方法と、スタッフを追加で雇う方法がありますが、いずれの方法を採っても利益が減少します。
- 俊敏性が低下する:長期的に特定のITを運用することで、より新しく優れたテクノロジーやアプローチを採用する能力が制限される可能性があります。資本コストに該当する資産に多くの資金、時間、人的資源を投資すると、市場で変化が求められている場合でも対応をためらうことがあり、俊敏な競合他社に対して不利になる可能性があります。
運用コストは、組織に次のような多くのメリットをもたらします。
- リスクの軽減:ITリソースやサービスを資本コストとして購入するよりも、運用コストとして購入する方がリスクが少なくなります。テクノロジーが進歩し、市場が進化しても、予算を適切に変更できます。また、ベンダーに満足できない場合も、そのITインフラに縛られることなく、ニーズにより適したベンダーに乗り換えることができます。
- メンテナンスコストの削減:ベンダーが基本的なネットワークと機器のメンテナンスをすべて担当するため、自社のスタッフを、製品の改善や利益の増強につながる他の業務に振り向けることができます。
- リードタイムの短縮:オンデマンドサービスにより、製品導入のリードタイムを数カ月、数年単位から数日、数時間単位に短縮できるため、顧客や従業員の満足度が向上します。
- アーキテクチャの適応性の向上:サブスクリプション型のITモデルを利用すると、アーキテクチャやサービスが適切に機能していない場合に、簡単かつ迅速に再構成できます。同様に、プロジェクトの完了時や中止時は、不要になったサポートアーキテクチャを削除できるため、余計なリソースに料金を支払わなくて済みます。
- 予算の柔軟性の向上:従量課金制サービスなど、運用コストに分類されるITサービスを利用することで、他のニーズに充てられるキャッシュフローを増やすことができます。
運用コストは、次のようないくつかの課題も伴います。
- コントロールできない:ITサービスを調達すると、ハードウェア、オペレーティングシステムソフトウェア、およびメンテナンスのコントロールをプロバイダーに委ねることになります。一般的にはメリットがリスクを上回りますが、ベンダーが契約を履行しなかったり、サービスが停止したり、倒産したりした場合、問題が発生する可能性があります。
- コストの増加:場合によっては、クラウドサービスを導入すると、自社で所有する場合に比べてコストが増加することがあります。しかし、長期間かけて比較的少ない金額を支払っているため、コストの増加に気づきにくいことがあります。
- 予測が難しい:従量課金制モデルには財務面で大きなメリットがありますが、使用量が月によって大幅に変動する場合、長期的な予測が困難になることがあります。
- 認識される価値が低い:クラウドITソリューションは永続的ではないため、設備投資のような価値をもたらさないと考えているマネージャーによって否定的に評価されることがあります。
自社に合った戦略作り
組織内で資本コスト戦略と運用コスト戦略を採用する最善の方法を決定するには、まず次の質問について検討します。
- 現在、ITの資本コストと運用コストに関するポリシーが定められているか。
- 自社の組織文化では、資本コストと運用コストのどちらが承認されやすいか。
- どの程度の財務的な余裕があるか。
- どのような10年計画を策定しているか。
- 現在、ITにどのくらい投資できるか。
- 利用を検討しているサービスは、今後10年間でどれくらいの費用がかかるか。また、同じ期間に必要なものを購入する場合と比べてどうか。
最終的に多くの企業が、オンプレミスのデータセンターとさまざまなクラウドテクノロジーを組み合わせるハイブリッドITアプローチを選択します。このアプローチにより、一部の機器を設備投資として購入して資本コストに計上しながら、状況に応じて運用コストモデルで戦略的にサービスを契約する柔軟性がもたらされます。
企業における今後の資本コストと運用コスト
今後の組織では、IT関連の支出に対して運用コストアプローチを採用するケースがますます増えるでしょう。現代のビジネスがクラウドソリューションへの依存度をますます高めている中、運用コストモデルのリソースがもたらす柔軟性と俊敏性は、IT分野において非常に重要です。また、運用コストアプローチは、企業が長い間抱えてきた、自社所有のインフラへの投資に伴う多くの問題を解決します。IT資産を保有する従来のモデルはなくならないかもしれませんが、今のやり方はいずれ一変し、運用コストモデルに基づく調達が一般的になる一方で、資本コストモデルによる購入はより戦略的に行われるようになる可能性が高いでしょう。
結論:予算の柔軟性を確保するには、資本コストと運用コストの理解が重要
多くのIT製品やサービスを、資本コストと運用コストのいずれかを選んで調達できるようになったことで、企業の選択肢はかつてないほど多くなっています。どちらのアプローチにも組織にとってのメリットがありますが、最良の結果を生み出すには、トレードオフを理解し、ビジネスのさまざまな領域にどちらのモデルを適用すべきかを判断できるようにすることが重要です。
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