Cisco Time Series Modelのご紹介:生成AIでマシンデータからインサイトを引き出す
Artificial Intelligence Liang Gou , Sonal PardeshiシスコとSplunkは、Cisco Time Series Modelのプレビューリリースを開始しました。Cisco Time Series Modelは、簡単に導入して、オブザーバビリティとセキュリティ領域の運用、自動化、エージェント的ワークフロー全体で信頼性の高い予測を行うことができる、オープンウェイトの時系列基盤モデルです。統計モデルや従来の機械学習モデルとは異なり、このAI基盤モデルでは、使用前にタスク固有のトレーニングやチューニングを行う必要がありません。マシンデータのオブザーバビリティ向上を目的とした事前トレーニングとイノベーションにより、必要なときにいつでもオブザーバビリティメトリクスを正確に予測できます。
Cisco Time Series ModelはHugging Faceからダウンロードできます。また、こちらのGitHubリポジトリでクイックスタートコードとサンプルノートブックを公開しています。
Cisco Time Series Model v1.0プレビューは、シスコとSplunkのオブザーバビリティインフラから収集した3,000億以上の一意のデータポイントで事前トレーニングされています。社内のオブザーバビリティベンチマークデータセットで評価したところ、そのパフォーマンスは、業界をリードするモデルと同等かそれを上回っています。今回のプレビューリリースを通じて、開発パートナーやお客様は、Cisco Time Series Modelを自動化やエージェント的ワークフローに統合できます。
ユースケース
Cisco Time Series Modelでは、1分または5分の解像度で2~10時間の運用予測が可能です。
- SRE:予測を自動化ワークフローに組み込んで、予測される需要に基づいてキャパシティを拡大または縮小できます。
- DevOpsチーム:モデルをアラートロジックと統合して、起こる可能性のあるインシデントを早期に通知する予測型アラートを生成できます。
- 管理者/アナリスト:予測されるリソース不足やSLO違反をダッシュボードで監視して、発生前に察知できます。
このように可視性が向上することで、インシデントの発生を未然に防ぐことができます。
Cisco Time Series Modelの概要
Cisco Time Series Modelは、膨大な量の時系列データで事前トレーニングされた生成AIモデルです。時系列の履歴データのパターン、傾向、季節性を認識して、その時系列が近い将来どのように推移するかを正確に予測します。アーキテクチャはLLM (大規模言語モデル)と似ていますが、LLMが、トークン化されたテキスト間の関係を学習するのに対して、Cisco Time Series Modelは、時系列データのトークン化されたセグメントのパターンを学習します。
既存の予測方法と比べてCisco Time Series Modelが特に優れているのは「ゼロショット」機能です。特定の時系列の予測を行うために、その時系列に合わせた追加のトレーニングやファインチューニングは必要ありません。時系列の履歴データを推論APIに送信するだけで、すぐに予測が生成されます。
マシンデータ予測のためのトレーニング
シスコとSplunkは、比類のない規模と種類のマシンデータを監視および管理しています。そのため、以下の領域で独自の視点が得られます。
- インフラとネットワークのメトリクス
- アプリケーションと実際のユーザーのメトリクス
- セキュリティシグナル
このプレビューリリースでは、6カ月分のマシンデータと、GiftEvalおよびChronosデータセットの一般的な時系列データを含む、約4億の時系列データから、約3,000億の一意のデータポイントをキュレーションしました。
マルチ解像度に関する課題:森も木も見る
マシンデータを分析するには、短期的な細かい傾向と長期的な季節性の両方を理解する必要があります。これらは、運用の時間スケールが異なります。
- 週単位の季節性を信頼できる精度で特定するには、少なくとも3週間の履歴データを分析する必要があります。
- 日単位の季節性を特定するには、少なくとも3日間の履歴データが必要です。
- 現行の時系列基盤モデルはいずれも、単一の時間解像度のデータしか受け入れません。
集約度が高いデータ(1時間単位など)を選択した場合、季節的な傾向は把握できますが、短期的な詳細は失われます。逆に、解像度が高いデータ(1分単位など)を選択した場合、直近の傾向は把握できますが、長期的な季節性は失われます。本番環境のオブザーバビリティを高めるには、両方の情報が必要です。
Cisco Time Series Modelのマルチ解像度アーキテクチャ
Cisco Time Series Modelは、2つの異なる時間解像度で時系列データを分析する、新しいマルチ解像度アーキテクチャを取り入れています。
- 推論APIには、1分または5分の解像度のデータポイントを最大3カ月分送信できます。
- モデルは、これらのデータポイントの半分を低解像度の集計に変換して、長期的な季節の傾向を学習します。
- 直近の半分は高い解像度のまま保持して、運用予測や予測型アラートに必要な短期的な変化を学習します。
このモデルは、コンテキストウィンドウで単一の時間解像度のデータを受け入れるのではなく、時系列メトリクスの履歴データを、同じ大きさで時間解像度が異なる2つのセグメントに変換します。コンテキストウィンドウの半分は高解像度のまま保持し、残りの半分は低解像度に集約します。具体的には、今回のプレビューのモデルは、推論時にコンテキストウィンドウで1024個のデータポイントを受け入れます。
- 時系列の履歴データのうち直近の512個のデータポイントは、高い解像度(1分や5分などの解像度)で維持され、運用の詳細や直近の変化を捉えるために使われます。
- 時系列の履歴データのうち残りのデータポイントは、低い解像度(1時間や5時間単位などの集計)に集約され、コンテキストウィンドウの残りの512個のデータポイントに割り当てられて、季節性や長期的な傾向を捉えるために使われます。
この2つの観点を統合することで、直近のコンテキストと長期的な構造の両方を認識しながら、より高解像度で予測を生成できます。
モデルのアーキテクチャ
Cisco Time Series Modelでは、新しいマルチ解像度パターンによってTimesFMアーキテクチャが拡張されています。主なコンポーネントは次のとおりです。
- 解像度埋め込み:学習された埋め込みにより、低解像度の入力と高解像度の入力を区別します。
- 区切りトークン:特別なトークンで、異なる解像度のコンテキスト間の境界を示すことで、2つの入力ストリームの解析を向上させます。
- デコーダーのみのトランスフォーマー:TimesFMに従って、トークンの埋め込みと逆埋め込みには正規化、パッチ分割、パディング、残差ブロックを使用し、生成にはトランスフォーマーのデコーダー層を使用します。
- 分位予測と点予測:損失は、点予測の平均2乗誤差と、予測の信頼区間を表す分位損失(q = 0.1、0.2、...、0.9)を組み合わせて計算します。
モデルのパフォーマンス
最も大切なのは、モデルのパフォーマンスです。それを調べるために、ベンチマークデータセットを使ってこのモデルと他のモデルを比較しました。GIFT-Evalベンチマークは、主にマシンデータの領域以外の一般的な時系列データの評価によく使われます。マシンデータについては、特有の課題がよく反映されたベンチマークデータセットを独自に開発しました。このマシンデータのベンチマークデータセットは、モデルの1.0リリースと同時に公開する予定です。
Cisco Machine Data Benchmark for Observability (左)とGIFT-Evalベンチマーク(右)での評価結果を次の図に示します。メトリクスはMAE (青)とMASE (オレンジ)です。
今後について
このプレビューリリースは始まりに過ぎません。2026年初頭にリリース予定のv1.0では、以下の追加を行う予定です。
- 解像度サポートの拡大:追加の解像度の組み合わせと、よりきめ細かい制御
- より大規模なトレーニングデータセット:継続的なキュレーションと統合による、エッジケース全体のパフォーマンス向上
- オブザーバビリティベンチマークスイート:実際の運用シナリオを反映した包括的な評価用データセット
- ツールの強化:推論API、統合例、統合ガイドの改善
Cisco Time Series Model v1.0プレビューのダウンロード
関連記事

エキスパートシステムからエージェンティックAIへ:サイバーセキュリティにおけるAIの進化

SplunkのAI戦略:デジタルレジリエンスのための信頼性の原則
