コールリッジの『老水夫行』に登場する船乗りは、周り一面を海に囲まれながら、水を1滴も飲めませんでした。今日の組織も同じような状況に置かれています。データはいたるところにあるのに、そこから十分に価値を(ときには最低限の価値すら)引き出せずにいます。
データの急増によってデータ管理戦略が複雑になったことで、セキュリティチームやオブザーバビリティチームにとっては、コストを抑えながら規制やコンプライアンス義務に準拠するのが難しくなっています。しかし、これらの目的を何とか果たそうとする中で、最も重要な目標を見失ってしまうことがあります。それは、データから価値を創出することです。
Splunkの最新のレポート『データ管理の新たなルール:AI時代の価値創出』では、データ管理のトレンドの変化を読み解き、組織がどのようにデータ戦略を構築しているか、また、今後に向けてどのように見直すべきかを検証しています。Oxford Economics社の協力のもとで行われたこの調査では、世界中の1,475人のセキュリティ担当者、オブザーバビリティ担当者、IT運用担当者に、考察、期待、課題について尋ねました。
初期のシンプルなデータ収集から今日の高度な分析やAI機能まで、組織はデータの量と実用性のバランスを取るために幾度となくデータ戦略を見直しています。このレポートは、データ管理戦略を再設計し、そのプラクティスを実践することで、組織のための価値創出という真の目標を実現するのに役立ちます。
今日、アクセス性の向上、デジタル化、AIを活用したイノベーションの加速に対するエンドユーザーの要求の高まりに伴い、データが爆発的に増加しています。調査では、データ管理の主な課題として67%がデータ量の多さを挙げ、データセキュリティとコンプライアンス(69%)に次ぐ2位に入りました。
データ量の多さやコンプライアンスを含め、データ管理の課題に取り組む組織は、これらの課題がビジネスにも幅広く影響をもたらしていると感じています。62%の回答者がコンプライアンス義務の未達を、71%が意思決定の低下を、46%が競争力の低下を挙げています。
データ管理の手法が古いままでは、データのライフサイクル全体の複雑さにうまく対処できず、データの増加とともに問題がさらに悪化します。
今回の調査で、組織のデータ管理戦略として導入率が高かった手法は、データライフサイクル管理(75%)とデータパイプライン管理(73%)でした。しかし、導入率が低かったデータの階層化、再利用、フェデレーションなどの手法こそが、データ環境を理解し、アクセス性を大幅に改善するための新たな機会をもたらします。
これらのデータ管理手法がデータの価値向上にどのように役立つかを簡単にご紹介します。
過去の成功が未来の成功を約束してくれるわけではありません。今、組織の目の前には、データ戦略を再考し、自社のルールを書き換えて、数々のメリットを実現する新たな機会が広がっています。
調査では、データ管理に優れている組織が、全面的なデータフェデレーション、データパイプライン管理、データライフサイクル管理の3つの手法を取り入れていることがわかりました。
これらの組織は他の組織と比べて、戦略的なデータ投資だけでなく、達成したビジネス成果の幅広さでも際立っています。データに関する指標も向上しており、79%がアクセス速度の向上(その他の組織では73%)、76%がデータ処理の効率化(同69%)を達成しています。さらに、62%がコスト削減につなげており(その他の組織では34%)、戦略的アプローチの効果の高さを物語っています。
しかも、メリットはデータ管理の効率化だけではありません。上記3つの手法を取り入れている組織は、セキュリティとオブザーバビリティの両方の領域でさまざまなメリットを享受しています。セキュリティ面では、改善領域として、79%がMTTR (平均応答時間)の短縮(その他の組織では61%)、65%が脅威の無力化の成功率の向上(同45%)、43%がセキュリティ侵害の減少(同34%)を挙げています。また、IT運用とオブザーバビリティの面では、79%がアプリケーションとインフラのパフォーマンスの最適化(その他の組織では60%)、76%が重要なビジネスプロセスの監視の成果向上(同58%)を挙げています。
データ管理戦略は、万能というわけではありません。しかし、全面的なデータフェデレーション、データパイプライン管理、データライフサイクル管理の3つの手法をデータ管理戦略に組み込めば、複雑さを軽減し、大量のノイズの中から真のアラートを特定できるようになり、セキュリティチーム、オブザーバビリティチーム、IT運用チームを強力に支援できます。
優れたデータ管理が組織のAI導入を成功に導き、AIがデータ管理に良い影響をもたらすという相互の関係も見逃せません。データ管理とAIの組み合わせは、ピーナッツバターとジャムのように互いに効果を高めます。
優れたデータ管理戦略は、AIに高品質のデータを提供してモデルのパフォーマンスを向上させるために非常に重要です。調査の回答者もこの点を認識しており、85%が、価値のあるインサイトを生成するための大量かつ多様データを確保するためにデータ管理戦略が役立っていると回答しています。また、74%が、AIモデルが学習するデータセットからバイアスを取り除くためにデータ管理戦略が役立っていると回答しています。
一方、AIを活用すれば、タスクを自動化し、生産性を高め、戦略を実践するうえでのギャップを補うことで、データ管理を強化できます。調査では73%が、定型作業を自動化することでデータ品質が向上したと回答しています。このようにAIは、データ検出の新たな機会を開きます。
最終的には、データ管理とAIの相乗効果により、イノベーションを推進して、競争力の強化とビジネスに関する意思決定の向上につなげることができます。
セキュリティデータとオブザーバビリティデータから価値を最大限に引き出すには、情報を収集して保存するだけでは不十分です。コストを削減しながらデータを成功に導くための資産に変える、効果の高い手法を体系的に組み合わせた、包括的なアプローチを取り入れる必要があります。
全面的なデータフェデレーション、データパイプライン管理、データライフサイクル管理の3つの主要な領域に重点を置けば、俊敏性と効率を高め、今日のデータドリブンなビジネス環境で競争優位性を獲得できます。
レポート全文では、詳しい調査結果、先進的な取り組みを行う組織の特徴、AIの時代にイノベーションを加速させレジリエンスを強化する方法についてのSplunkエキスパートからの提言をご紹介しています。ぜひご覧ください。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳、高山 慶子によるレビューです。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は1,020を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキストに基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。