毎年開催されるHIMSSの医療・ヘルスケアテクノロジーカンファレンスは決して期待を裏切りません。毎年、医療・ヘルスケア業界の動向を肌で感じることができます。そして今年は会場全体がAI、セキュリティ、デジタルレジリエンスの話題で持ちきりでした。プレゼンをしたり、お客様と近況報告をしたり、最新のイノベーションを見て回ったりする中で、1つ気づいたことがあります。それは、テクノロジーは急速に進化しているものの、信頼が追いついていないということです。多くのお客様がしきりに訴えていたのは、AIと自動化によりワークフローの変革が実現する一方で、AIドリブンの意思決定における信頼の確保が依然として大きな壁となっているということでした。
医療・ヘルスケア業界のデジタル革命:現場から見えてきた主要なトレンド
- AIが臨床医のワークフローを再定義:どの臨床医も、管理業務に費やす時間を削減して患者対応にかける時間を増やしたいと話していました。これには、AIドリブンの自動化が有効です。EPICの報告によれば、82%の臨床医がカルテの作成にAIを活用することで負担が軽減したと感じています。ただし、この話には裏があります。まだ全員がこのプロセスを信頼しているわけではないのです。透明性と教育・啓発がAI活用にあたっての鍵となります。
- 相互運用性が依然として優先事項:患者データはサイロ化されることが多く、その結果、ケアの引き継ぎがうまくいかず、ストレスになっています。リアルタイムで記録を共有したり国家規模でデータネットワークを構築したりする動きが進んでおり、将来的に実現すれば臨床医は患者の総合的な健康状態をリアルタイムで把握できるようになります。ただし、この取り組みはまだ道半ばです。データガバナンスとセキュリティが今なお大きなハードルとなっています。
- セキュリティとレジリエンスの最前線:サイバー脅威は、依然として医療・ヘルスケア業界における最大の脆弱性の1つです。ランサムウェア攻撃やデータ漏えいが増加の一途をたどる中、組織はデータを保護して業務を継続するために、ゼロトラストセキュリティ、プロアクティブなリスク評価、リアルタイムの脅威検出へとアプローチをシフトしています。
- データドリブンの意思決定がニューノーマルに:感染症発生の予測や人員配置の最適化など、AIを活用した分析は、リアクティブな対応からプロアクティブな対応へのシフトに役立っています。話をしたリーダーの皆さんは一様に、データは単に業務効率を高めるだけでなく、患者ケアの未来を形作りつつあると考えていました。
- 病棟を超えた診療:在宅医療モデル、遠隔モニタリング、バーチャルナーシングに移行する動きが広がっています。デジタルツールによって、従来の枠にとらわれない新しい形のケアが実現しています。一方で、課題も残っています。対面でのケアと同程度のセキュリティ、精度、信頼を確保するにはどうすればよいかということです。

CiscoとSplunkによるソリューションのメリット
Splunkの統合セキュリティ/オブザーバビリティプラットフォームは、IT、セキュリティ、ビジネスの運用全体でデジタルレジリエンスを実現します。医療・ヘルスケア業界では、このプラットフォームによりリアルタイムのインサイトを取得して、システムパフォーマンス、サイバーレジリエンス、患者ケアを改善することができます。医療・ヘルスケア組織の規模や形態はさまざまです。大規模な多国籍組織もあれば、小規模な地域病院もあり、セキュリティ、データ管理、デジタルトランスフォーメーションに対するアプローチはそれぞれ異なります。これこそが、Cisco XDRとSplunk Enterprise Securityの統合が非常に有意義である理由です。この統合により、柔軟で拡張性の高いセキュリティ運用プラットフォームが誕生し、医療・ヘルスケア組織のそれぞれの状況に合わせて活用できるようになりました。
- 脅威の検出、調査、対応(TDIR):この包括的なアプローチでは、行動分析、脅威インテリジェンス、拡張検出/対応(XDR)、セキュリティオーケストレーション(SOAR)を組み合わせることで、従来のSIEMを超えた包括的なサイバーレジリエンスが実現します。
- リアルタイムの可視化による相互運用性とコンプライアンスの両立:医療・ヘルスケア組織は、EHRから医療用IoTデバイスに至るまで、あらゆるものが相互に接続された広大なネットワークを利用しています。CiscoとSplunkは、HIPAA、NIST2、NIS2などに対するコンプライアンスを確保しながら、リアルタイムの安全なデータ統合を実現します。
- AIが安全性にもたらす影響への対応:ワークフローにAIが組み込まれるようになると、安全面の懸念が増大していきます。CiscoとSplunkによるソリューションを活用することで、AIモデルの説明可能性と倫理性を確保しながら、データポイズニングや敵対的学習といったAI特有の脅威を検出して軽減できます。
リーダーの見解
HIMSS25では、アメリカ国家安全保障局長官を務めた元米陸軍大将のポール・ナカソネ氏が、医療・ヘルスケア業界のリーダーに向けてAIの活用を新たな視点で捉えるよう呼びかけました。
「医療・ヘルスケア分野にAIを適応させて活用し、発展させていく必要があります。これは患者ケアの改善だけでなく保護のためでもあります」
同氏は、医療・ヘルスケア業界においてサイバーセキュリティの確保が急務である点を強調し、AIがリスク管理と臨床意思決定に大きな変革をもたらす可能性があると主張しました。
文化、信頼、変革の必要性
AIの活用に関して極めて重要な課題となるのは、テクノロジーそのものではなく信頼です。臨床医の多くは、AIドリブンの意思決定に抵抗を感じており、この状況を克服するには教育・啓発、透明性、文化の変革が鍵となります。AIは、疑念を生むブラックボックスではなく、医療ワークフローに組み込まれた明確かつ説明可能な要素であるべきです。
医療の未来の到来
HIMSS25は、医療・ヘルスケア業界においてデジタルトランスフォーメーションが急速に進んでいることを裏付ける内容でした。ただし、実際問題として、テクノロジーの進化に対し、信頼の確保、活用、ポリシーの整備が追いついていません。AI、自動化、相互運用性の最新技術をすべて活用するためには、安全で適応性が高く、患者重視のソリューションに投資する必要があります。
CiscoとSplunkはこの変革の中核を担い、医療・ヘルスケア組織が信頼、安全性、レジリエンスを高めながら前進できるようにお手伝いします。
HIMSS25で最も印象に残ったことは何ですか?ぜひお聞かせください。
このブログはこちらの英語ブログの翻訳、前園 曙宏によるレビューです。