データインサイダー

Internet of Medical Things (IoMT)とは

Internet of Medical Things (IoMT:医療IoT)とは、IoT(モノのインターネット)テクノロジーのサブカテゴリであり、医療健康情報テクノロジーで使用され、相互に接続されたデバイスやアプリケーションで構成されます。IoMTデバイスは、安全なネットワークを介して情報を送信することで、患者と医師と医療機器(病院設備、診断装置、ウェアラブルテクノロジーなど)をつなげます。

IoMTは、ヘルスケアIoTとも呼ばれることもあり、一般的なIoTデバイスと同様に、自動化技術やセンサー、マシンベースのインテリジェンスを活用して、日常的な医療処置や監視業務での人手への依存を軽減します。またIoMTを導入すると、患者と医療従事者が患者の医療情報に広範にアクセスできるようになるため、クリニックや病院への不要な通院が減るだけでなく、患者と医療機関双方のコストが削減されます。

2017年、Frost & Sullivan社は、Internet of Medical Things (IoMT)市場が年平均成長率26.2%で拡大し、2021年までには720億ドル規模に達すると予測しました。現在の市場規模からすると、これはかなり低い予測でした。新型コロナウイルスの感染拡大によってIoMTの利用が飛躍的に伸び、隔離やステイホームの要請によって遠隔治療や遠隔医療が急激に拡大しています。IoMT市場が成熟するにつれて、遠隔医療と遠隔治療は従来の医療の姿を大きく変え続けています。IoMTは正確で行き届いた診断やタイムリーな治療を実現するとともに、患者と医療機関双方のコストを削減しています。

IoMTと遠隔医療

遠隔医療と遠隔治療の定義と両者の違い

遠隔医療は、「コンピューターやモバイルデバイスなどのデジタル情報や通信テクノロジーを使用して医療サービスにリモートからアクセスし、自身が受ける医療を管理すること」と定義されています。「医療」という言葉と同じように、遠隔医療とは、患者と医師のコミュニケーション、診断、継続的な監視、教育やカウンセリングなどの幅広い活動を含みます。

一方、遠隔治療は一般に、臨床サービス(リモート診断と患者の監視)を提供するテクノロジーベースの医療ツールを指す、より狭い意味の言葉として使われてきました。

遠隔治療は2000年代に登場しましたが、当初その範囲は限られていました。初期の遠隔治療アプリケーションはあくまで臨床目的のもので、映像で潜在的な患者をスクリーニングしたり、離れた場所からICU内の患者のバイタルサインを監視したりといったサービスに限定されていました。遠隔治療が進化するにつれて、その機能は臨床医学の境界を越えて急速に拡大し、より広範な意味を持つ遠隔医療という言葉が生まれました。現在、遠隔医療は、臨床サービスだけでなく、医師のトレーニングやビデオチャットルームで開催される運営会議なども含む広い意味の言葉となっています。

かつてはっきりとした違いがあったこの2つの言葉は、現在では柔軟に使われるようになり、同じ意味で使われることも多くなっています。

 

Internet of Medical Things (IoMT)と遠隔医療および遠隔治療との関係

遠隔医療と遠隔治療が、どちらもさまざまなテクノロジーやサービス、戦略を指すのに対し、IoMTは、厳密には遠隔医療や遠隔治療を機能させるデバイスを指します。IoMTの接続性がなければ遠隔医療はほぼ不可能であり、同時にIoMTデバイスはそれだけではほとんど役に立ちません。たとえば、患者の血圧を毎日記録し、測定値をクラウドにアップロードするデバイスは、それだけではその患者の健康状態の改善に何も貢献しません。そこには、測定値の解釈から状態の診断、治療計画の立案、治療の提供、患者の長期的な監視にまで対応する、広範な遠隔医療ソリューションが必要です。こうした作業の一部はAI(人工知能)や機械学習といったコンピューターベースのテクノロジーで行えることもありますが、いずれかの時点で人間の医師が実際に関わる必要があります。

IoMTデバイスの機能が進化を続けるにつれて(また、ステイホームを求められる状態が世界的に継続されるにつれて)、こうしたテクノロジーは医療界にとっても一般の人々にとってもますます重要なものになっていくでしょう。

 

IoMTのメリット

IoMTは、患者と医療機関の双方に非常に多くのメリットをもたらします。

  • 一人ひとりに合った正確な診断と治療 — 多くのIoMTデバイスは、患者のバイタルサインを詳細かつ綿密に追跡するように設計されており、医療機関を短時間受診しただけでは取得できないレベルのデータを提供します。たとえば、1カ月分の血圧や脈拍の測定値があれば、医師は状態をより正確に診断し、その人に合った効果的な治療計画を作成できます。
  • リモート治療とアドバイス — IoMTデバイスはその性質上、患者の自宅など、どのような場所からでもデータを取得でき、取得した情報を医師に安全に送信することができます。データの取得から送信まで、すべてにおいて医療機関の受診は不要です。
  • 患者の自立 — ウェアラブルやスマート体重計といったIoMTデバイスによって、患者は自分の生活機能をコントロールできるようになり、医師に診てもらわなければ得られなかったような情報を入手できます。年に1回の健康診断を待たなくとも、患者は今や自分の健康をリアルタイムでチェックできます。

IoMTが医療機関にもたらすメリット

  • コストの抑制 – 近年の医療コストの急騰を受け、医療機関はコスト効率の高い医療テクノロジーを積極的に採用しています。2015年にGoldman Sachs社は、IoMTテクノロジー、すなわち患者のリモート監視によって総額で3,050億ドルものコストが削減されると予測しています。
  • 患者の監視の効率化 – 慢性疾患や重症の患者は集中的に監視する必要があり、場合によっては24時間体制でのケアが必要になります。IoMTデバイスを利用すれば、医師は人間の介護士に頼ることなく離れた場所から患者を監視でき、何か問題が起きた際はすぐに通知を受け取ることができます。
  • 運営の改善 – IoMTは、医療機関や管理者が施設を容易に一元管理できるようにすることで病院の運営を改善します。IoMTデバイスによって環境の可視性が高まるほか、医師も手術支援ロボットや高解像度なデジタル画像システムなどの新しいテクノロジーを利用できるようになります。
IoMT導入の課題

IoMTの導入にはそれなりの難しさがあります。中でも最大の課題は、セキュリティとプライバシーです。医療データは、特に医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)によって厳しく規制されており、医療機関はセキュリティ侵害を防ぐために大きな負担を強いられています。IoMTデバイスを導入すると、患者と医療機関の間でやりとりされるデータが大量に増えることなどが原因で、リスクが一定程度高まります。

IoMTベンダーにとっては相互運用性と標準規格もハードルになります。あるベンダーのヘルスケアIoT機器が別のベンダーのインフラストラクチャーでシームレスに動作するのが理想ですが、現在のところは困難な状態で、標準規格も統一されていません。一部に認証に取り組む動きも見られますが、業界全体で統一された相互運用性が実現するのは当分先となりそうです。

もう1つの問題であり、おそらく解決が最も難しいのは、IoMTデバイスを更新できないという点です。発売されたばかりのときには最先端であっても、いったん現場に導入されたIoMTデバイスは、アップグレードや新機能の更新が簡単にいかないことがあります。利用者が自分のウェアラブルデバイスやコネクテッドデバイスを毎年アップグレードする可能性は低く、病院は高価な新しい機器をすぐには導入しないことが多いため、市場には機能の異なる製品がパッチワークのように存在するようになります。手術によって体に埋め込まれるペースメーカーなどの移植可能なデバイスは、アップグレードがさらに困難です。

 

IoMTデバイス

IoMTデバイスの主なカテゴリ

IoMTデバイスのカテゴリは多岐にわたります。主なものは次のとおりです。

  • 消費者向けウェアラブル – Fitbitなどのフィットネスモニター、アクティビティトラッカー、Apple Watchなどのスマートデバイス。
  • 医療向けウェアラブル – 臨床医の指導のもとで使用される、臨床レベルの規制対象製品。たとえば、痛みの緩和、身体能力の向上といった健康上の問題を解決するように設計されたデバイスなどがあります。
  • 遠隔患者監視(RPM)デバイス – 慢性病の治療に役立つシステム。通常は、長期にわたって治療を受けている患者の自宅に置かれます。
  • 個人用緊急応答システム(PERS) – 患者(多くの場合、年配者)が緊急時に介護者の助けをすぐに求められるようにするウェアラブルデバイス。
  • スマートピル – 患者が飲み込むことで患者の体内についてのデータを医療機関にワイヤレスで送信する、新しいカテゴリのデバイス。
  • ポイントオブケアデバイスやキオスク – 診断情報やその他の医療データを、医師のオフィスでも現場でも、すべてがそろった検査室でなくても場所を問わずに診断情報を取得できるモバイルデバイス。超音波診断装置から血糖測定装置に至るまでさまざまなデバイスが含まれます。
  • クリニック内モニター – ポイントオブケアデバイスと似ていますが、ポイントオブケアデバイスはリモートで管理でき、専門知識を持つ医療提供者が現場にいる必要がない点が異なります。
  • 院内デバイス – 幅広い範囲のデバイスカテゴリ。MRI装置、病院の資産管理や患者の流れの監視、在庫(薬剤など)の管理、その他の院内リソースの管理を行うデバイスなどが含まれます。
 
IoMTにおけるセキュリティの重要性

IoMTデバイスは、利便性、治療の質の向上、コストの削減など、数多くのメリットをもたらしますが、こうしたメリットはすべて一定程度のリスクを伴います。このため、IoMTデバイスではセキュリティが何よりも重要です。Frost & Sullivan社の予測によれば、医療セキュリティ市場は、単独で2023年までに87億ドル規模に達します。

患者が直面する最も重大なリスクは、個人的な医療データが失われることで混乱が発生したり、漏洩した場合に自身に損害が発生したりする可能性があることです。このリスクは医療機関にも重くのしかかります。顧客のデータが漏洩すれば、金銭的に、また刑事的にも責任を問われる可能性があるからです。さらにHIPAAは、違反している医療機関に最大で毎年1,500万ドルの罰金を科すと定めており、実刑判決を受ける可能性もあります。このため、極めて厳しいセキュリティ手順に従って患者データを保護することが不可欠です。

また、ハッカーが狙っているのは個人の医療データだけではありません。医療従事者や医療機関は、ほかにもさまざまな種類の攻撃を受けます。ハッカーが他人の資格情報を使用して投薬や医療サービスを受ける医療詐欺が頻繁に発生しています。また、他の業界がコンピューターネットワークを介して攻撃を受けているのと同様に、サイバー犯罪者は、医療情報を狙って特定の医療機器(スマートペースメーカー、血糖モニター、インスリンポンプなど)を攻撃し、さらにはオンラインで機器を無効化して身代金を要求し、患者をリスクにさらす可能性があります。IoMTデバイスは、こうしたあらゆる種類の攻撃のエントリポイント(または直接のターゲット)になり得ます。

 
IoMTとIoTの類似点と相違点:IoMTは、IoTとどう異なるのか

IoT(モノのインターネット)は、スマート冷蔵庫やコネクテッドサーモスタットから、産業用ロボット、スマートカーに至るまで、総計で70億以上のデバイスが含まれる壮大なカテゴリとなりました。IoMTはIoTのサブカテゴリであるため、2つのカテゴリには当然ながら共通点が多くあります。

ヘルスケアIoT (IoMT)デバイスには、手術支援ロボットなど、本質的に医療のみを目的としたものが多い一方、一般的なIoTのカテゴリに入ると見なすことができるIoMTデバイスも数多くあります。たとえば、脈拍や血中酸素の監視といった明らかにIoMTの機能を実行するスマートウォッチは、テキストメッセージを受信したり、行き方を調べたりといった目的で使用される一般的な消費者向けデバイスでもあります。

長期的には、IoMTやIoTのその他のサブカテゴリとIoTを分ける境界線はますます曖昧になっていくと考えられます。

 
コネクテッドヘルス市場
IoMT市場とは

IoMT市場は、利用者と医療機関という2つの大きなグループに分けられます。医療機関は、さらに医師、研究所、臨床医、病院経営などのさまざまなサブグループに分けることができます。製薬会社やドラッグストアなどの小売業者を、IoMT市場の二次的なメンバーと考えることもできます。

Deloitte社は、先頃、世界のIoMT市場が2022年には1,580億ドル規模に達し、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域に均一に広がるとの予測を発表しました。南米と中東/アフリカ地域市場の患者数は比較的少ないものの、相当数に上ると予測されています。

 
医療機関でのIoMTの活用状況

IoMTデバイスは従来の医療や患者のケアを一変させつつあり、この傾向はいっこうに衰える気配はありません。Deloitte社によれば、50万種類以上のIoMTデバイスがすでに流通しています。こうした新しいテクノロジーは、患者と医療従事者の距離を縮めているだけでなく、これまでになかった種類の治療を可能にし、利用者の生活の質を高めています。 

IoMTデバイスとヘルスケアIoTによって、医療従事者は正確な診断をすばやく下せるようになり、リスクのある患者の監視を強化できるようになっています。また、医療サービスの総コストが削減され、これまで医療サービスを利用できなかった患者にまでサービスの範囲が広がっています。病院やクリニックも、IoMTを活用して医療ITシステムの運用効率を高め、コストを削減しています。

 
遠隔医療と遠隔治療の現状

近年すでに注目されつつあった遠隔医療と遠隔治療は、新型コロナウイルスの感染拡大による普及拡大が一因となって、今日著しい成長を遂げています。McKinsey社の最新レポートによると、遠隔医療システムを通じて医師の診察を受ける患者数は、パンデミック発生前と比べて推定で最大175倍増加しています。2019年と2020年を比べると、遠隔医療を利用する患者の割合は11%から76%へと1年間で急激に増加しました。また、パンデミック発生前には遠隔医療市場の規模は30億ドルと推定されていましたが、今では近い将来に2,500億ドル規模へと成長する見込みです。

規制当局や保険会社でも、遠隔医療サービスの受け入れ体制が急速に整備されつつあります。医療保険会社は遠隔診療に対して対面診療と同率の保険料を支払い、医師やその他の医療従事者は地域を越えて患者を治療することが認められています。

少なくとも当面は、遠隔医療が従来の医療を劇的に変えていくでしょう。

 
IoMTの将来

IoMTは激動の最中にあり、IoMTデバイスは医療の姿を大きく様変わりさせようとしています。バイタルサインを24時間365日追跡し、何か問題が起きた際には医療機関にアラートを送信するウェアラブルデバイスを患者が選べるようになる、そんな未来が来る可能性があります。さらにこうしたデバイスは、AIと機械学習テクノロジーを活用して、将来問題が起こる可能性を示す生体信号のわずかな変化が起きたタイミングを判断できるような、予測を中心としたものへ進化する可能性があります。長期的には、IoMTテクノロジーの進化と相まって、医師の焦点は処方から予防へと徐々に移行し、その結果、患者がより健康で長生きできるようになる可能性もあります。リアルタイムの監視を選ぶ(そのため、クリニックや病院を受診しなくなる)患者の保険料を保険会社が下げる可能性もあるでしょう。

高度な診断システムや手術支援ロボットといった、クリニックや病院内のIoMTデバイスの機能も向上し続け、その結果、直接医師の診察を受ける必要がある患者の診断の質が高まるとともに、回復にかかる時間が短縮され、生存率が高まると予測されます。

ただし、こうしたメリットを手にするには、その前に実現しなければならないことがあります。コンピューターの処理能力、ワイヤレス通信技術が進化し、コンポーネントの縮小が進まなければ、この市場が将来開花することはありません。

 
今後の遠隔医療と遠隔治療

新型コロナウイルスによって遠隔医療テクノロジーを利用する患者や医療機関が増えましたが、この動きがこれからもずっと続くとは限らない、とMcKinsey社は指摘しています。パンデミックが収束しても遠隔医療が日常的に利用されるようになるには、医療機関が大きく変わる必要があります。遠隔医療が定着するには、テクノロジーやデータの相互運用性が向上する必要があると同時に、医療従事者がこの新しい働き方を受け入れる必要があります。

一方、現在のところ、患者は遠隔医療と遠隔治療に納得しているように見えます。誰もがビデオ会議で医療機関を受診できるようになった今、病院の待合室に患者が急いで戻ることは当面ないでしょう。

 
結論:医療を一変させつつあるIoMTと遠隔医療

IoMTは、将来現実のものとなるかどうかわからない、仮定上のカテゴリではありません。IoMTテクノロジーはすでに私たちの身の回りにあり、自分の健康を管理する患者の能力を高めるとともに、医療従事者とのコミュニケーションの質を向上させて、数百万という人々の人生に変化をもたらしています。また、IoMTは医師をはじめとする医療従事者にとっても重要なテクノロジーとなりつつあり、医師は短時間でより正確に診断できるようになっています。しかも、患者を直接診なくて済むことも少なくありません。IoMTは経済的なメリットも大きく、今後数年で数千億ドルものコストを削減すると予測されます。