公開日:2022年6月1日
NoOpsとは「No Operations(ノーオペレーション)」からきており、組織のITおよびデータ管理の運用を完全に自動化して人間の介入を不要にすることが可能であるという考え方です。
組織は、ITおよびデータ管理において、ITOps(IT運用)、AIOps(人工知能によるIT運用)、DevOps(ソフトウェア開発とIT運用を統合し、ソフトウェア開発、テスト、反復の継続的かつ統一的なプロセスを実現)など、各種業務の運用に関するさまざまな概念を導入してきました。
運用の合理化を目指す流れのなか、組織やサービスプロバイダーは、より迅速に製品やサービスを展開する方法として、自動化への注目を高めています。NoOpsは、企業がAIを使ってIT運用の自動化を進められるならば、すべての業務をカバーできるようになる可能性があるという考えから生まれました。つまり、パッチ管理からバックアップアクティビティまで、IT運用において手動の操作が不要になるということです。
この概念は、運用上のオーバーヘッドの削減を目指しているものの、どこから着手すればよいのか、どのようなソリューションが特定の組織やチームに最適なのか判断できないでいるビジネスリーダーにとっては、混乱を招くものかもしれません。また、プロセスから人間を完全になくすのは非現実的だと考える人も少なくありません。こうした人々はNoOpsについて、着実に実施すべき計画というよりも、高すぎる目標として捉えています。
NoOpsというものは、専門家が主張しているところによると、IT部門が処理する日常の簡単な作業だけでなく、現在は専任の担当者が行っている高度に複雑なプロセスやワークフローにも対応できるものです。それでは、これによってDevOpsの必要性は消え去るのでしょうか。それともNoOpsは、DevOpsが次に進化していく段階に過ぎないのでしょうか。この記事では、NoOpsが対処する問題とそれがDevOpsに与える影響、そしてAIの自動化がNoOpsの将来につながるとしたら、どのような姿になるのかについて掘り下げます。
NoOpsの基盤となっているのは、IT部門の人々が行うのと同じ作業をソフトウェアが実行できるという考え方で、これはデジタルトランスフォーメーションのさまざまな概念が提唱していることです。基本的に、ほぼすべての組織の開発部門とIT部門は、ITインフラの設計、計画、プロビジョニング、保守を行うサービス組織といえます。IT部門の需要が増加しているにもかかわらず、ITや運用の専門職(特にレガシーシステムの管理)を間接費とみなして、厳しく監視すべきと考える組織もあります。その一方で、需要の増加に伴い、一部のIT組織はプロセス指向で対応してきました。
こうした困難な状況への解決策としてNoOpsアプローチが目指しているのは、企業が開発部門とIT部門の需要の増加に対応するために必要なOps(運用)の専門家の労力を軽減し、開発者が製品のコードの記述と改善のみに集中できるようにすることです。製品、インフラ、管理、セキュリティ、運用の改善に向けてより多くのプロセスとリソースを導入し、完全な自動化を目指してプラットフォームを進化させることで、これを実現します。最終的には、こうして自動化されたシステムによって、すべてのオペレーションが制御されるようになります。
NoOpsはイノベーションと効率性のそれぞれにおいて、多くの意味で一歩前進を遂げています。NoOpsでは、開発者チームがインフラに関する問題についてシステム管理者とコミュニケーションをとる必要はありません。クラウドのPlatform as a Service(PaaS)やFunction as a Serviceなどの適切なツールを使用すれば、NoOps環境は多くの場合、DevOpsよりも高速なデプロイプロセスを実現できます。そのため、スタートアップや小規模アプリケーション、Product as a Serviceの企業が注目する手法となっています。
人工知能によるIT運用(AIOps)の成功例の増加は、多くの点でNoOpsの動向に影響を及ぼしています。表面的には、日常的な作業の自動化、平均解決時間(MTTR)の短縮、より迅速で効率的かつ効果的なIT運用を可能にする、といういくつかの共通の目標があります。また、AIOpsとNoOpsのどちらによっても、IT運用チームは自由に使える時間を取り戻すことができます。これにより、ビジネスの高度なニーズに対応するために、より多くの時間を費やして、専門性や創造性を高めることに集中できるようになります。
AIOpsとNoOpsの異なる部分の1つは、人間にしかできないことと、AIで代替できることの区別の仕方にあります。AIOpsの機能が進化し続けるなか、人間の介入なしで実行できる作業の数も複雑さも増しています。さらに、AIOpsは現在のところ、NoOpsよりも広い範囲の用途に適用されているわけではなく、人間のIT専門家を置き換えようという意図もありません。そのため、一部の専門家は、AIOpsのほうがNoOpsアプローチよりも、これらの共通目標を達成する現実味が高いと感じています。
ただし、NoOpsの基盤となっているのが、インフラをコードとしてプロビジョニングし管理できる技術である点は重要です。APIを使用して基盤インフラを管理できなければ、AIが人間に取って代わることはないでしょう。
DevOpsは、ITデリバリーのためのアプローチであり、人、手法、ツールを連携させることで、開発チームと運用チームのサイロ化を解消します。このアプローチを採用すると、アプリケーションやサービスの開発を加速できます。さらに、ITインフラ管理の対応を迅速化することで、変化の速い現在の市場に対応しながらIT製品の導入と更新を行うことができます。
DevOpsが開発ライフサイクル全体に焦点を当てているのに対し、NoOpsは継続的なデリバリーとプロビジョニングに焦点を当てていて、不要な人的介入をなくすことで新しい機器の実装プロセスを加速します。NoOpsの支持者であっても、DevOpsには、NoOpsが実行できるタスクよりもはるかに複雑で長期にわたるやりとりが伴うものであることに同意するはずです。
DevOpsとNoOpsを連携させる方法を、いくつか以下にご紹介します。
ただし、DevOpsは開発と運用のスキルセットを統合させる一方で、大規模な組織では実現が困難なこともあります。第一に、開発者と運用の専門家が戦略と実行について連携すべき場面で課題が生じます。DevOpsでは、インフラの専門家とソフトウェアの専門家が協力して作業する必要があります。これはつまり、一方の失敗が他方の失敗を引き起こす可能性があるということです。最悪の場合、ソフトウェア開発プロセス全体の失敗にもなりかねません。このような問題があることからDevOpsの効果に疑問が生じて、NoOpsアプローチの出現につながりました。
NoOpsの目的は、現在ITOpsで人間の介入を必要とする部分の作業を自動化することです。ITOpsと同様に、NoOpsも問題の発生時に根本原因の分析を行うために必要な、多数のログ、メトリクス、トレースを生成します。
AIOpsの成功は、機械学習がこれらのプロセスをより迅速かつ効率的に実行する可能性を示していますが、ITOpsは人間のオペレーターに取って代わることを目指していません。ITOpsはそれよりも、ITチームのメンバーがより効果的に業務を遂行するために使用できるデータや情報を提供するように設計されています。こうした業務は多くの場合、現時点のAIによる自動化で対応できるよりも大幅に高度で複雑、かつ経験と想像力を要するものです。
NoOpsは、AIOpsと共通の目標が多数あり、ITOpsのいくつかの部分を自動化し、DevOpsの構成要素を一部取り入れています。
NoOpsの潜在的なメリットは、あらゆる組織におけるデータを活用した自動化と同じであり、アップタイムとセキュリティの確保、問題発生の未然防止、IT組織の効率の向上、組織のすべての関係者がデータとITインフラから最大の価値を引き出せるようにすることが含まれます。
これらのメリットは以下のように整理できます。
NoOpsの最大の課題の1つに、ITプロセスから人間を排除しようとするのは非現実的であり、危険が伴うと感じている人々からの絶え間ない反発があります。NoOpsが、主にソフトウェアやハードウェアのプロビジョニングや保守に使用されている場合でも、自動化されたシステムの能力を超えた問題には誰が対応するのかといった懸念が残ります。ITインフラが複雑化するのに伴い、人間による監視の必要性がこれまで以上に高まっていると主張する意見も多くあります。
これ以外にも、NoOpsは以下のような新たな問題を引き起こす可能性があります。
NoOpsのメリットには、アップタイムやセキュリティの向上、問題の未然防止などが挙げられます。しかし、問題に対する責任の所在を明らかにしようとする際に課題が生じる可能性があります。
NoOpsは、開発環境の拡張や最適化、日常業務の手順の自動化に関心のあるソフトウェア企業にとって、最適な選択肢といえます。また、クラウドコンピューティングの進歩のおかげで、さまざまな規模の企業が、NoOpsを既存のプロセスやインフラに追加する道が開かれました。NoOpsは、多くの中小企業やProduct-as-a-Serviceの企業にとって、将来性があり、重要な役割を果たす可能性が高く、市場に参入して収益性の向上をより早く実現するのに役立ちます。
NoOpsは今後、より精度の高いソフトウェア管理をAIが行うインテリジェントな運用につながる可能性が見込まれます。市場の需要が着実に増えていくなか、より高い生産性とレジリエンスを備えたより小規模なチームを企業が維持するうえで役立つでしょう。将来に何が起きるにしても明らかなことは、ベンダーやアナリストが予測や期待をテクノロジーの実情に適応させていくなかで、NoOpsという言葉の意味は進化を遂げていくということです。
この10年間で自動化は驚くべき進歩を遂げました。それでも、人間の関与をなくすのはまだまだ先の話です。また、NoOpsがDevOpsの完全な終わりを意味する可能性は低いといえます。DevOpsは、ほとんどの大規模アプリケーションで広く普及している信頼性の高い手法であると同時に規範でもあるからです。
一方で、NoOpsはDevOpsから進歩したものと言うこともできるでしょう。NoOpsの将来はまだ不確実であり、この概念は一部の人々が考えるような支持を得ることは決してないかもしれません。しかし、NoOpsをきっかけとした取り組みを進めてクラウドや運用インフラを新たな限界へと押し上げることで、組織は新たなメリットを得られる可能性があるのです。
IT/オブザーバビリティに関する予測
驚きに勝るものはありません。すべてを受け止める準備を整えておきましょう。Splunkのエキスパートが予測する、来年の重要なトレンドをご確認ください。
Splunkプラットフォームは、データを行動へとつなげる際に立ちはだかる障壁を取り除いて、オブザーバビリティチーム、IT運用チーム、セキュリティチームの能力を引き出し、組織のセキュリティ、レジリエンス(回復力)、イノベーションを強化します。
Splunkは、2003年に設立され、世界の21の地域で事業を展開し、7,500人以上の従業員が働くグローバル企業です。取得した特許数は850を超え、あらゆる環境間でデータを共有できるオープンで拡張性の高いプラットフォームを提供しています。Splunkプラットフォームを使用すれば、組織内のすべてのサービス間通信やビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化し、コンテキスト(把握したい要素) に基づいて状況を把握できます。Splunkなら、強力なデータ基盤の構築が可能です。
日本支社を2012年2月に開設し、東京の丸の内・大手町、大阪および名古屋にオフィスを構えており、すでに多くの日本企業にもご利用いただいています。
© 2005 - 2023 Splunk Inc. 無断複写・転載を禁じます。
© 2005 - 2023 Splunk Inc. 無断複写・転載を禁じます。