2025年には、ある話題がお客様との会話によくのぼりました。デジタル関連の問題が、初めから大規模な障害として現れることはめったにありません。それは静かに始まります。処理に予想以上に時間がかかったり、エラーが表示されてもすぐに消えたり、普段は問題なく動作する機能が突然不安定になり、少なくとも毎回スムーズには動作しなくなったりします。
この程度の問題は、当初は軽く見られがちです。技術的な障害はなく、アラートも発生していないからです。しかし、顧客は気づきます。操作をやり直さなければならず、完全に放棄してしまうかもしれません。電話に手を伸ばす顧客もいるでしょう。苦情が寄せられ始め、コールセンターへの問い合わせ件数が急増する頃には、カスタマーエクスペリエンスはすでに悪化し、チームは対応に追われることになります。
多くの組織では、システムに示された状況と顧客が実際に体験している状況の不一致こそが、デジタルパフォーマンスの管理方法の見直しに乗り出すきっかけとなります。
そこで会話の方向性を変えつつあるのがオブザーバビリティです。オブザーバビリティは、システムが稼働しているかどうかを示すだけではありません。パフォーマンスの問題がどのように生じ、フリクションがどこから始まるか、そして、小規模な問題がより大きな問題へと発展する前にどれほどすばやく対応できるかを理解するためにも役立ちます。
Splunkの『2025年のオブザーバビリティの現状』レポートによると、オブザーバビリティのリーダー的組織に該当する組織は、平均で年間125%のROIを実現しています。その要因は、ダウンタイムの削減、検出と解決の迅速化、生産性の向上、カスタマーエクスペリエンスの強化です。つまり、問題を早期に察知できるチームは、より適切に対応できる傾向にあるということです。
その差がさらに顕著になるのは、デジタルエクスペリエンスと信頼が密接に結びついている業界です。健康保険業界は、その1つです。
健康保険会社にとって、デジタルチャネルは今日、加入者が基本的なサービスを利用する際の主要な窓口になっています。たとえば、保険金の請求、補償内容の確認、契約内容の管理などです。その操作が遅くなったり、動作が不安定になったりすると、顧客の不満が一気に高まり、信頼に疑念が生じます。
この現象はオーストラリアではよく見られます。健康保険業界は、医療コストの高騰と規制当局による監視の強化に直面し、業界を監視する消費者保護団体からは何度も、特に苦情が多い金融サービスの1つとして名指しされています。こうした環境において、デジタルレジリエンスは、信頼性とサポートに対する保険加入者の見方に直結します。
この変化への対応に取り組む組織の1つがHCFです。HCFは、オーストラリア最大級の非営利健康保険機構であり、Splunkのお客様でもあります。
HCFは、デジタルでのやり取りが増えるなかで、システムの稼働状態を維持するだけでは不十分なことに気づきました。チームには、加入者目線でのデジタルサービスのパフォーマンスについてさらに明確なインサイトを獲得し、エクスペリエンス低下の兆候を早期に察知する必要がありました。
多くの大規模組織と同様に、HCFでも、チームは監視ツールをいくつも併用していました。各ツールでは、環境の一部しか可視化できません。そのため、異なるシステム間で点と点を結び付けることも、技術的な問題が加入者に影響を及ぼし始めたタイミングを知ることも困難でした。
この課題に対処するために、HCFは、Splunk、AppDynamics、ThousandEyesを使って環境全体からの運用データをすべてSplunk Cloud Platformに統合しました。これにより、パフォーマンスをリアルタイムでより包括的に把握できるようになりました。また、必要なコンテキストを獲得することで、パターンを検出し、問題の優先順位を判断し、加入者にとって重要な課題に集中して取り組めるようにもなりました。
保険金請求プロセスは、すぐに主な重点領域となりました。HCFのネットワークおよびリライアビリティエンジニアリング責任者であるAnton Eksteen氏は、昨年メルボルンで開催されたCisco Liveで講演を行い、チームがいかにして保険金請求に関するアクティビティをリアルタイムで把握できるようになったかを説明しました。具体的には、トランザクション量、承認、拒否のほか、エラーやタイムアウトが発生し始めた箇所まで可視化できます。こうした取り組みにより、以前は特定に数時間かかっていた問題を、今日では数分で検出できるようになり、加入者への影響が軽減されています。
可視性の向上は、インシデント対応での手作業の削減にもつながっています。繰り返し発生する問題の原因がすでにわかっている場合は、システムやサービスの再起動などの対応策を自動化できます。これにより、問題をより速く、しかも中断を低減しつつ解決できます。エンジニアリングチームも同じデータを使って、バックエンドの変更がユーザーに与える影響をすばやく確認し、改善点が期待どおりの効果を発揮しているかどうかを把握しています。
オブザーバビリティの活用範囲は、トラブルシューティングにとどまりません。今日では、リスク管理やレジリエンス構築にも組み込まれつつあります。
Splunkのレポートでは、約3分の2 (64%)のリーダーが、オブザーバビリティチームとセキュリティチーム間の緊密なコラボレーションによって、顧客に影響を及ぼすインシデントが減少したと回答しています。また、4分の3以上(76%)が、アプリケーションのセキュリティ脆弱性の検出能力がビジネス全体の成果にとって重要であると回答しています。

出典:Splunk (シスコ)
こうしたインサイトを総合すると、オブザーバビリティがますますビジネスの推進力とみなされている理由がわかります。問題を早期に検出し、その影響を把握して、もっとすばやく対応できれば、業界を問わず、より確実に信頼を維持できます。
デジタルへの期待が高まるなか、一部の業界はその導入で先行しています。金融サービスと製造は、成熟したオブザーバビリティプラクティスをいち早く導入した業界です。その推進要因は、収益保護、製品パフォーマンス、サプライチェーンのレジリエンスにおけるメリットです。Splunkのお客様であるREPAY社やBosch社なども、運用の詳細な可視化を組み込んで問題を早期に検出し、ダウンストリームへの影響を軽減しています。
医療・ヘルスケア業界の目の前にも同じ機会が広がっています。組織は同じレベルの可視性をエンドツーエンドで顧客向けシステム、臨床システム、管理システムにわたり適用することで、最も重要な場面でデジタルトラストを強化できます。