AI時代の製造業におけるIT/OTサイバーセキュリティの強化
Security Ewald Munz , Sahil Gupta執筆者
シスコ
- Thomas Hopfgartner氏、EMEA IIoT製造責任者
Splunk
- Ewald Munz、EMEA地域担当製造業/自動車業界/サステナビリティ責任者
- Sahil Gupta、AWS EMEA地域担当パートナーテクニカルマネージャー
アマゾン ウェブ サービス(AWS)
- Samuel AbiDyer氏、シスコ/Splunk担当パートナー開発マネージャー
- Rajesh Gomatam、AWS産業/パートナーソリューションCoE、主席ソリューションアーキテクト
産業用AIが切り拓く製造業の新たな可能性
産業用AIは、製造業に新たな可能性を切り拓き、将来の産業における価値創出を形作っていきます。生成AIやAIエージェントを、ロボティクス、IoT、デジタルツイン、高度なアナリティクスと組み合わせることで、産業プロセスの自己学習化、高効率化、レジリエンスの向上を実現します。特に生産関連の環境では、AIは生産性、競争力、イノベーションを高める鍵と考えられています。
現在、多くの産業現場では、AIの導入はすでに実証実験の段階を超え、幅広く定着しています。シスコの「2026 State of Industrial AI Report」と、ドイツの業界団体Bitkomが紹介する産業用AIの導入事例によれば、多くの組織では、自動品質検査やエネルギー管理の最適化など、生産性向上やコスト効率化を目的としたユースケースからAI導入を開始し、将来的にはより広範な変革に向けた実践的な基盤を構築しています。
しかし、新たなトレンドとして、AI導入の目的は効率化からレジリエンス強化へと広がりつつあります。3社に2社が、レジリエンスを重視したユースケースへのAI活用の拡大を計画しています。
AI導入が進んでいる組織ほど、AIをレジリエンス、安全性、長期的な業務改善と結び付ける傾向が強く、戦術的な効率化から戦略的な価値創出へと重点が移りつつあることがうかがえます。ロボティクス/フィジカルAIなどの新たなテクノロジーは、製造業にとって大きな変革をもたらすでしょう。
ヒューマノイドだけでも、その数は2030年の3,000万体から2050年には6億5,000万体に増加すると予測されています。20年間で22倍です。
— Adrian Reisch博士、Ernst & Youngパートナー
IT/OTサイバーセキュリティの重要性:AI導入に伴う避けられない課題
製造業におけるAIの時代はすでに到来しています。しかし、その成功には、統合されたスマートでスケーラブルなIT/OTサイバーセキュリティが不可欠です。工場が効率性とレジリエンスの向上に向けて産業用AIを導入する中、情報技術(IT)と運用技術(OT)を隔ててきた従来の境界は薄れつつあります。こうした融合は大きな可能性を切り拓く一方で、セキュリティと運用に重大な課題ももたらします。
クラウドとの接続がますます進む製造現場のセキュリティを、どのように確保すればよいのでしょうか。データを単に収集するだけでなく、実際に活用するにはどうすればよいでしょうか?また、こうした環境で、NIS2などの規制への準拠をどのように確保すればよいのでしょうか。
当然ながら、サイバーセキュリティは現在、AI導入をさらに進めるうえで最大の障壁となっており、シスコの「2026 State of Industrial AI Report」によると、産業環境をいかに保護するかがこれまで以上に重要になっています。
「AI導入の拡大は産業環境全体にわたってサイバーセキュリティのリスクを高める」
— シスコ「2026 State of Industrial AI Report」
同時に、この調査の回答者は、サイバーセキュリティが最大の障壁であると同時に、最も重要な取り組み領域であると捉えており、85%が、AIによって自社のサイバーセキュリティ態勢が強化されると期待しています。現時点ではセキュリティ上のギャップがAI活用の拡大の制約になっている一方、組織はAIを検知、監視、レジリエンスを強化するためのツールと位置付けています。
シスコ、Splunk、AWSによるスマートでスケーラブルな統合アプローチ
シスコ、Splunk、AWSは連携して、現代の製造業向けに統合されたスマートでスケーラブルなセキュリティフレームワークを次のように提供しています。
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シスコのAI対応ネットワーク - 基盤となるインフラストラクチャ
AIがもたらす膨大なデータ需要に対応する、高性能でセキュアな基盤です。製造現場をよりスマートかつ迅速で競争力の高いオペレーションへと変革するために必要な、高信頼なネットワーク接続を提供します。
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シスコのOTセキュリティ - 可視化への第一歩
このアーキテクチャの中核を担うのがCisco Cyber Visionです。産業ネットワーク内の通信を詳細に分析し、接続されている資産を検出することで、生産を中断することなく、生のOTトラフィックから有用なインサイトを得られます。
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SplunkのエージェンティックなIT/OT SOC - インテリジェンスを統合するレイヤー
Cisco Cyber Visionが資産と潜在的な異常を特定すると、Splunkはこれらのデータソースを取り込み、IT/OTを統合したエージェンティックSOCによる高度なセキュリティ分析、オーケストレーション、自動化を実現します。
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AWSクラウド - スケーラブルなエンジン
AIドリブンな製造を推進するには、膨大な処理能力とストレージが必要です。AWSは、こうしたインサイトを大規模に活用するためのクラウドネイティブなインフラストラクチャを提供し、予知保全からプロセス最適化まで、製造データを活用した高度なAI/MLモデルを実行できるようにします。さらに、このスケーラブルなインフラストラクチャでは、AWS独自の143のセキュリティ標準およびコンプライアンス認証によるコンプライアンスの確保も容易です。
シスコのAI対応ネットワーク - 基盤となるインフラストラクチャ
シスコは、シームレスでセキュアなエンドツーエンドのネットワーク環境を提供できるため、製造業におけるAI時代の可能性を最大限に引き出すことができます。
こうしたネットワークにより、製造業は以下を実現できます。
- 高速、低遅延でレジリエントな接続:ネットワークは、AIアプリケーションと生産設備の間に信頼性と柔軟性を備えた接続を提供し、産業エッジ、工場内データセンター、クラウド環境への展開をサポートします。これにより、AIワークロードは重要なデータやデバイスにセキュアかつ安定してアクセスできます。
- 産業グレードのスイッチングとワイヤレス性能:シスコの産業用イーサネットスイッチと超高信頼無線バックホール(URWB)は、マシンビジョンや無人搬送車(AGV)などのAIユースケースに不可欠な、堅牢で広帯域、かつほぼ遅延ゼロの通信を実現します。
- 並列冗長プロトコル(PRP)を採用したデュアルファブリックアーキテクチャ:この設計は、重要な産業用オートメーションおよび制御システム(IACS)のトラフィックに対して、パケット損失のないレジリエンスと高可用性を提供し、ネットワーク障害時でも継続的な稼働を維持します。
- 統合された産業サイバーセキュリティ:ネットワークにAIドリブンなセキュリティ機能を組み込み、接続資産の可視化、ゾーンセグメンテーションの適用、ゼロトラストによるリモートアクセス、脅威の検知と対応を実現します。これにより、生産システムとAIアプリケーションをサイバーリスクから保護します。
- 統合管理とアシュアランス:AIを活用したツールにより、IT/OT環境全体のエンドツーエンドの可視性と自動化を実現し、ネットワーク運用を簡素化するとともに、AIの導入を加速します。
- 製造業におけるAIユースケースをサポート:品質検査向けのAI/MLドリブンなマシンビジョン、生産設備(HMI、PLC)の仮想化、AIのトレーニングや推論のためのセンサーからクラウドまでのセキュアで確実性の高いデータ収集などをサポートします。
- 検証済みの設計と実装ガイダンス:シスコは、検証済みの設計図とベストプラクティスを提供し、ITチームとOTチームが連携して、生産環境の統合とデジタル化を確実に進められるよう支援します。これにより、導入にかかる時間、リスク、複雑さを軽減します。Cisco Design Zone (検証済み設計ガイド)
Cisco Firewall向けSplunk追加容量キャンペーン
シスコとSplunkは、セキュリティチーム向けに新たな統合機能を提供しています。対象となるCisco Security Threat Defense (FTD)ライセンスを保有するSplunk EnterpriseまたはSplunk Cloudのお客様は、期間限定で、Splunkの追加ライセンス費用なしで、最大5GBのファイアウォールログデータを取り込むことができます(利用条件が適用されます)。
Cisco Cyber VisionによるOTセキュリティ - 可視化への第一歩
Cisco Cyber Visionはシスコのセキュリティ基盤と密接に統合されており、産業環境に向けに専用設計された強力なサイバーセキュリティソリューションとして、堅牢なOT環境の保護を実現します。OT資産とネットワーク通信を継続的に可視化することで、製造業における攻撃対象領域の縮小と、産業ネットワーク内での脅威の拡散防止を可能にします。
Cisco Cyber Visionの大きな強みの1つは、シスコのセキュリティポートフォリオとの統合と、Splunkとのシームレスな連携です。この連携により、セキュリティ運用センター(SOC)の対象範囲をOT領域まで拡張し、IT/OT環境全体でセキュリティイベントを一元的に可視化して、相関分析できるようになります。製造業では、大量のセキュリティデータをリアルタイムで監視・分析することで、脅威の検知を強化し、インシデント対応を迅速化できます。
Cisco Cyber Vision Splunk Add-Onアプリは、製造業や産業分野のユースケースに最適化された、構築済みでカスタマイズ可能なダッシュボードを提供します。これらのダッシュボードにより、包括的な可視化が可能になります。その結果、セキュリティアナリストから製造現場の管理者まで、さまざまな関係者が複数拠点のOTセキュリティ態勢をほぼリアルタイムで監視できます。
製造環境における主なメリットは、以下のとおりです。
- セキュリティの死角を解消:OTセキュリティのテレメトリデータを単一のインターフェイスに集約し、攻撃チェーン全体を可視化します。
- 全社的なリスク管理:脆弱性管理を、個々の拠点ごとの評価から、資産の重要度に基づいてリスクをスコアリングし、優先順位を付ける戦略的なプログラムへと進化させます。
- 高度なセキュリティガバナンス:構築済みでカスタマイズ可能なダッシュボードを活用して、グローバルなOTセキュリティ態勢を監視します。
- 領域を横断した脅威検知:ITとOTのセキュリティイベントを相関分析し、両領域にまたがる高度な脅威を検知します。
- 運用パフォーマンスの監視:資産の健全性、ネットワークパフォーマンス、製造プロセスに関連する運用指標を継続的に把握します。
Cisco Cyber Visionは、産業用ネットワーク機器にセキュリティ機能を直接組み込むことで、追加のアプライアンスを不要にし、大規模な導入を簡素化します。また、AIを活用したポリシー推奨による適応型ネットワークセグメンテーション、OTワークフローに合わせたセキュアなリモートアクセスをサポートします。さらに、豊富なOTコンテキストをSplunkなどのITセキュリティツールに提供し、脅威の検知と対応を強化します。
スケーラビリティを確保するため、Cyber Visionは、シスコの多くのソリューションと同様に、AWS上でホストすることができます。
SplunkのエージェンティックなIT/OT SOC - インテリジェンスを統合するレイヤー
Splunkは、ガートナー社SIEM (セキュリティ情報/イベント管理)部門のマジック・クアドラントで11年(2015~2025年)連続でリーダーの1社と評価されています。これは、脅威の検出、調査、インシデント対応の分野での長年にわたるSplunkのリーダーシップを証明しています。
統合レジリエンスのためのエージェンティックSOCを支えるSplunkは、セキュリティデータ、分析、ツール、AIを統合して、定型業務の自動化、ワークフローのオーケストレーション、複雑なインサイトの導出、プロアクティブなリスク軽減を実現します。Splunkはオープンなデータファブリック、強力な分析、統合されたツール群、人間参加型(HITL:Human-in-the-Loop) AIなどを統合プラットフォームにまとめ、セキュリティ運用の概念を一新しました。
Splunkによって、製造メーカーでは次のことが可能になります。
- セキュリティチームを、事後対応にあたる「火消し」役から、プロアクティブな戦略的部門に変える。
- AIベースでリスクを分析する基盤レイヤーを構築し、顧客プロファイル、脅威インテリジェンス、資産データを組み合わせて、自律的な予防、自己修復、継続的な学習をサポートする。
- セキュリティ担当者が将来の攻撃を予測し、きわめて高速に一連の対応を連携・実行できるようにする。
- SecOpsを戦力増強の原動力に変え、ビジネスのイノベーションを促進すると同時に、攻撃に対して常に先手を取る。
次世代の強力なセキュリティコンセプトを導入することは、工場のセキュリティ強化に効果的です。Splunkは統合レジリエンスの一環として、専用のOT Security Add Onを提供し、その実現を支援します。Splunk Add-On for OT Securityは、導入済みのSplunk Enterprise Securityフレームワークを拡張して、OT環境のセキュリティの可視性を高めます。このアドオンを導入することで、オフィス(IT)環境と現場(OT)の両方をカバーし、Splunk Enterprise Securityの活用範囲を広げて、脅威の検出やインシデントの調査、対応力を強化できます。
シスコのCyber Visionのような既存のOT専用セキュリティソリューションのデータを取り込んで、IT環境とOT環境を包括的に可視化することもできます。Cyber Visionは、Splunkbaseの統合アプリを通じてこのレイヤーに直接データを送り、Splunkの分析を補完するOTテレメトリを提供します。
AWSクラウド - スケーラブルなエンジン
AIドリブンな製造を推進するため、AWSでは、インサイトを大規模に活用し、製造データに基づく高度なAI/MLモデルを実行するのに必要なクラウドネイティブなインフラストラクチャを提供しています。予知保全からプロセス最適化まで、AWSはこうしたワークロードを支える膨大な処理能力とストレージを提供します。さらに、AWSのスケーラブルなインフラストラクチャにより、製造業は、AWSが準拠するセキュリティ標準や取得済みのコンプライアンス認証を自社のコンプライアンス対応に活用できるため、産業用AIアプリケーションにセキュアでコンプライアンスに準拠した環境を確保できます。
このようなスケーラブルなクラウド基盤により、製造業は大量のデータを効率的に処理し、AIモデルを大規模に展開することで、AIの可能性を最大限に引き出すことができます。これにより、製造オペレーションを、よりスマートでレジリエント、かつ競争力の高いものへと変革できます。
AWSを活用することで、製造業は以下を実現できます。
- セキュリティ分析を柔軟にスケール:数年分のOTセキュリティテレメトリをAmazon S3やAmazon Security Lakeに取り込み、保持します。これにより、Splunkの統合サーチでデータをそのままクエリーできるため、包括的な調査機能を維持しながらコストを削減できます。
- 産業規模でAI/MLを実行:Splunk AI ToolkitはAmazon SageMakerとネイティブに統合されており、データサイエンティストは、カスタムETLパイプラインを構築することなく、リアルタイムの不正・異常検知から、予知保全まで、運用データを直接使用してモデルをトレーニングし、展開できます。予測結果はSplunkのダッシュボードに即時に反映され、同じセキュアなクラウド境界内で、インサイトからアクションまでのループを完結できます。
- 検証済みのアーキテクチャで導入を迅速化:AWSは、産業用IoTおよびOTセキュリティのワークロード向けに構築済みのリファレンスアーキテクチャを提供し、価値創出までの時間を短縮するとともに、導入初日からベストプラクティスに沿った構成を実現します。
- 調達とライセンス管理を簡素化:AWS Marketplaceを通じて、製造業はCisco Cyber Vision、Splunk Enterprise Security、および補完的なOTセキュリティツールを、単一の合理化された契約体系のもとで調達できます。これにより、支出を集約し、ベンダー管理を簡素化できます。
- エッジまで拡張:AWS OutpostsとIoT Greengrassを活用することで、レイテンシーの影響を受けやすいユースケース向けに、工場のエッジで計算処理と分析を実行できます。同時に、集中管理されたクラウドサービスとシームレスに同期することで、企業全体の可視性を確保できます。
これらを組み合わせることで、統合アーキテクチャを支えるスケーラブルなエンジンが形成されます。シスコはネットワークとOTの可視性を、Splunkはエージェンティックインテリジェンスを提供します。そしてAWSは、これらすべてを現代の製造業が求めるスケール、スピード、セキュリティ態勢で運用できるようにします。
今後の展望 - 産業界のリーダーが優先すべき取り組み
シスコの「2026 State of Industrial AI Report」の調査結果によれば、AIの導入が加速する一方で、その活用規模にはばらつきがあり、産業界のリーダーには主に以下の3つの取り組みが求められています。
- AIの大規模活用のためのインフラ基盤の構築
- 産業用AIの導入が停滞するのは、アイデアが不足しているからではありません。ネットワーク、処理能力、運用モデルが大規模な展開に対応できていないことが、AI活用の拡大を阻む要因となります。
- AI活用に不可欠なサイバーセキュリティ基盤の確保
- サイバーセキュリティは、後から取り組む課題ではなく、AI対応環境に不可欠な基本要件として位置付ける必要があります。
- AIの効果を引き出すためのIT/OT連携
- AI活用の拡大は、技術面だけでなく、組織面の課題でもあります。ITとOTの連携により、スピード、確実性、再現性を高めることができます。
シスコ、Splunk、AWSは連携して、製造業がスマートでスケーラブルな統合基盤を構築し、IT/OTの複雑さをAI時代における最大の競争優位性へと変えることを支援します。
詳しくは、以下のリソースをご覧ください。
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