サイバーフィジカルシステム(CPS)の解説

IT Muhammad Raza

サイバーフィジカルシステムとは、物理空間のメカニズムをデジタル環境でモデル化、自動化、そして制御するシステムを指します。

この分野は大きな成長を遂げています。実際、サイバーフィジカルシステムの世界市場は、2022年の約870億ドルから、2028年には1,370億ドルを超える規模に達すると予想されており、年平均成長率(CAGR)は7.9%になると見込まれています。

では、サイバーフィジカルシステムとは具体的にどのようなものなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

サイバーフィジカルシステムとは

米国国立科学財団(U.S. National Science Foundation)は、サイバーフィジカルシステム(CPS)を次のように定義しています。

物理的な物やインフラにセンサー、計算、制御、ネットワークなどの機能を組み込み、相互接続して、インターネットに接続するシステム。

このシステムでは、物理世界での挙動とデジタル世界での挙動が深く結びついています。CPSにより、ユーザーは物理システムの属性をデジタル世界で再現することができます。

そして、物理システムでの空間的および時間的な動的挙動がソフトウェアアルゴリズムによって捕捉され、直感的で使いやすいデジタルユーザーインターフェイス(UI)に表示されます。

CPSとインダストリー4.0

サイバーフィジカルシステムは、ハイパーオートメーションインテリジェンスによって推進されるインダストリー4.0 (第4次産業革命)の重要な要素であり、物理システムの設計とシミュレーションプロセスにインテリジェンスとコグニティブコンピューティングの機能を組み込みます。

このシステムでは、ナノデバイスの精密製造を行うロボットのように、複雑な操作が可能です。物理的な機器とプロセスのデジタルツインを作成することで、エンジニアは一元化された統合インターフェイスから変更をシミュレートし、操作を制御できます。

CPSのユースケース

サイバーフィジカルシステムの応用範囲はほぼ無限です。現在では、医療や製造から、自動車、建設、エネルギー産業に至るまで、幅広い分野で活用されています。CPSの一般的なユースケースには以下のものがあります。

IoTとCPSの違い

一見すると、サイバーフィジカルシステムはモノのインターネット(IoT)に似ていると思われるかもしれませんが、技術的には異なる概念です。重要なのは、インターネットは「情報を伝達する仕組み」にすぎないという点です。

つまり、他の製品とは本質的に異なる優れたスマート製品を作り出すのは、メッセンジャーであるインターネットではなく、「モノ」を設計する手法なのです。この違いについて、米国のヴァンダービルト大学は次のように明確に説明しています。

サイバーフィジカルシステムの特徴

では、サイバーフィジカルシステムの主な特徴を見てみましょう。

データ主導型

データはクロスドメインのセンサーやIoT機器から収集します。次に、エンドツーエンドのデータパイプラインとデータ管理プログラムを構築します。ここでは、センサーの半構造化データと非構造化データを効率的かつ安全で、信頼性の高い方法で処理できる必要があります。

組み込み型のモバイルセンサーとデータ融合

小型のモバイルセンサーを物理的な物に組み込みます。数多くのデータソースから収集されたデータが統合され、利用可能なデータが生成されます。さらに、コンテキストに応じた必要な知識やインサイトがネットワーク全体の情報ソースから引き出されて提供されます。

適応可能でトレーニング可能なモデル

データ融合プロセスの後、リアルタイムの情報を基にAIモデルをトレーニングします。以下のように行います。

これにより、物理世界で生成される情報の動的な状態と多様な将来予測を考慮に入れた正確なサイバーフィジカルシステムモデルを構築できます。

シミュレーションベースの設計

システム設計では徹底的にシミュレーションを行います。これはダイナミクスをモデル化し、物理的な設計特性について正確なリアルタイムフィードバックを提供できるようにするためです。

(システムのリアルタイムフィードバックはオブザーバビリティによって実現できます。)

自律性

サブシステムと連携コンポーネント(ハードウェアとソフトウェアの両方)は、以下の3点において自律性を備えるように設計します。

このような特性を持つことで、サイバーフィジカルシステムモデルは人間による介入や手動のプロセス制御を行わなくても、物理システムで新たに生じるダイナミクスや挙動を認識できるようになります。

継続的なリアルタイムのコミュニケーション

IoTセンサーとネットワークデバイスは、標準化された通信プロトコル、API接続、オープンソースのソフトウェアコンポーネントを利用して、継続的に情報を記録します。

これは非依存型の環境です。つまり、プラットフォームに依存しないデジタルシステム設計であり、標準化された通信ミドルウェアを活用します。

スケーラビリティ

大量の構造化データと非構造化データを社内で保管できるように、スケーラブルなデータプラットフォーム(データレイクなど)を設計します。

スキーマオンリード方式に従ってデータプラットフォームを設計することで、スケーラビリティを強化できます。データはリアルタイムで取り込まれ、必要なデータのみが事前処理され、モデルのトレーニング、分析、設計に使用できるようになります。

セキュリティとプライバシーを前提にした設計

物理設計のモデリングには、機密性の高い個人情報(PII)が含まれる場合があります。たとえば、建物のエネルギー消費量は、居住者の生活パターンを正確にモデル化するために利用できますが、当然これはプライバシー侵害となります。しかし、この情報は個々の建物のエネルギー需要を正確に予測するためには不可欠です。

プライバシーやセキュリティに関して適用される規制を考慮したメカニズムをサイバーフィジカルシステムに組み込むことができます。具体的には、ユーザーの識別情報をマスキングし、すべてのデータを匿名化してから、システムの物理設計属性のモデル化や制御に使用できるようにします。

サイバーフィジカルシステムのアーキテクチャ

では、これらの特性を備えたサイバーフィジカルシステムは、どのように機能するのでしょうか。これは主に、適用される分野や業界によって異なります。

サイバーフィジカルシステム設計のアーキテクチャフレームワークには、一般に以下のコンポーネントが含まれます。

たとえば、製造業やインダストリー4.0では、複数レベルのアーキテクチャフレームワークが採用される場合があります。例として5Cアーキテクチャは、最下位から最上位まで以下の5つのアーキテクチャレベルで構成されます。

以上のように、サイバーフィジカルシステムによって、メッセンジャーであるインターネットを活用して、新たなイノベーションを切り拓くことができます。新しい可能性を探っていきましょう。

このブログはこちらの英語ブログの翻訳です。

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