IIoT (産業用IoT):入門
Industries Stephen WattsIIoTは「Industrial Internet of Things」の頭字語で、製造業、輸送業、エネルギー業などの産業分野におけるコネクテッドデバイスと高度な分析の活用を表します。
General Electric社は2012年、イノベーションの第3の波を表す「インダストリアルインターネット」という言葉を生み出しました(第1の波は19世紀の産業革命、第2の波は1950年代から1990年代にかけてのメインフレームコンピューターの導入)。今日、インダストリアルインターネットは第4次産業革命、すなわちインダストリー4.0を象徴しており、スマートデバイス、高度なデータシステム、物理ネットワークと人的ネットワークを連携させて、企業が運用効率を高め、ビジネス上の意思決定と成果を向上させることを可能にしています。
IIoTは、IoT(モノのインターネット)と呼ばれる、相互接続されたデバイスで構成される大規模なシステムの一部です。IoTでは、インターネットに接続し、人間の介入なしで他のデバイスのネットワークと通信できるものであれば、コーヒーポットから自動車まで、あらゆる物理的な対象物が「モノ」になり得るとされています。
IIoTのメリットは非常に多く、幅広い業界でさまざまに応用されています。企業は多様なネットワークに接続することで、ダウンタイムとメンテナンスコストの削減、生産量の増加、職場の安全性の向上を実現し、多くの場合、業務の状況をより的確に把握できるようになります。この記事では、IIoTがデジタルトランスフォーメーションでどのように活用されているかを含め、一般的な概念について説明します。
IIoTの概要
IIoTテクノロジーを導入すると、自動化されたインストルメンテーション、データの収集と分析、レポート作成、意思決定を生産工程にもたらすことができます。これを可能にするのが、スマートセンサー、ゲートウェイ、ソフトウェアプラットフォーム、およびクラウドサーバーが相互に接続されたシステムです。機械に搭載されたセンサーがデータを収集してゲートウェイに送信し、ゲートウェイでコネクテッドデバイスと、データセンターやクラウド上で実行されているアプリケーションやサービスを接続します。収集されたデータには、コンピューターやモバイルデバイスからアクセスできます。
IIoTは非常にさまざまな形で活用されており、より多くの業界で採用されるにつれて、新たな産業用途が登場しています。特に、以下のような用途で広く受け入れられています。
- 予知保全 - 運用チームや保守チームは従来、予期しない障害を回避するために、スケジュールベースのメンテナンスと状態監視という2つのモデルを軸にしてきました。いずれも、制御システムのインターフェイスで実行する分析には制約があって柔軟性に欠けていたり、振動解析などの手動で収集したデータを入力したりする必要があります。これらのモデルでは障害を予測できないため、人員計画や交換用パーツの確保が難しく、コストの増加につながります。IIoTシステムでは、産業用機械にスマートセンサーを搭載し、温度、圧力、振動数などのパラメーターをリアルタイムに追跡することで、機器の状態を継続的に監視します。このデータはクラウドに送信され、機器のモデル、設定、使用状況、メンテナンスデータなどに関連付けられたあと、予測分析アルゴリズムを実行して、機器に障害が発生する可能性やそのタイミングを判断します。重大な問題が検出されると、適切な担当者またはチームに保守アラートが送信されます。
- 産業用オートメーション - 従来、自動化は特定の手動タスクを実行するために導入されてきましたが、IIoTでは、プロセスや機械の運用効率を監視して改善するために用いられています。スマートセンサーとPAC (プログラマブルオートメーションコントローラー)やPLC (プログラマブルロジックコントローラー)などのオートメーションツールを併用して、産業機械からデータを収集します。収集したデータはアプリケーションやサービスにストリーミングされ、機械のパフォーマンスに関するインサイトを得るために分析されます。
- ロボティクス - 組み立てラインから病院、フルフィルメントセンターまで、あらゆる場所にロボットが動員され、作業を行っています。多くの場合、複雑な作業や危険な作業、あるいは生産フローの改善に活用されています。こういったロボットを新しい革新的な方法で監視して制御するためにIIoTシステムを使用すると、従来の産業技術とビッグデータ、AI、ARなどの新しい機能を融合させて新たなユースケースを解決する能力を生み出せます。その他の種類の産業機械と同様に、ロボットセンサーのデータを収集、分析することで、保守に関する意思決定やパフォーマンスの向上に役立てることができます。
- ロジスティクス - 倉庫では、IIoTを利用して在庫状況をリアルタイムに把握することで、在庫不足による売上の損失を防ぐことができます。スマートセンサーを使って生鮮品の状態を監視すれば、保存条件が悪化した際に管理者にアラートを送信できます。また、輸送業者は商品をリアルタイムに追跡して、商品が完全な状態で時間どおりに到着するようにし、収集したデータを利用して輸送を効率化できます。
IIoTは、製造、農業、輸送、エネルギー管理などの分野でイノベーションを促進しており、今後数年間で他の業界にもさらなる発展をもたらすことが期待されています。
IIoTとIoTの違い
IIoTとIoTの違いは、大まかに言うとそれぞれの目的です。IIoTはさまざまな産業プロセスの改善に重点を置いているのに対し、IoTは消費者の利便性の向上を主な目的としています。それぞれを使用してどのように目標を達成するのかということに焦点を当てると、その違いをより詳細に把握できます。
- テクノロジー:IIoTもIoTも、コネクテッドデバイス、スマートセンサー、ソフトウェア、クラウドコンピューティングサーバーを利用しますが、これらのテクノロジーの用途には大きな違いがあります。IoTデバイスは一般的に、身近にある簡単でありふれた作業を自動化します。たとえば、セキュリティカメラが見慣れない顔を検知するとクラウドにビデオを送信するといった処理です。一方、IIoTデバイスは、精度、相互運用性、信頼性がより重視される、ハイテクな作業を実行します。
- 信頼性:消費者向けIoTでも信頼性は重要ですが、IIoTでは絶対に欠かすことができません。産業用ネットワークは、数万という機械、コントローラー、ロボットなどの機器を支えており、複数のエンドポイントが広大な範囲に広がっています。さらに、IIoTでは、システム障害がほとんど許容されません。IoTデバイス、IoT以外のデバイス、そしてセンサーが増えれば増えるほど、信頼性が大きな課題となります。
- セキュリティ:消費者向けIoTでのサイバーセキュリティ対策は、主にユーザーのプライバシーに関するものです。そのため、多くの消費者向けIoTデバイスは、セキュリティ上の強固な予防策を備えておらず、ボットネットを介したハッキングや広範な攻撃にさらされています。しかし、IIoTシステムに対する同様の攻撃は、被害者の健康と安全に、より重大で広範囲な影響を及ぼす可能性があります。たとえば、IIoTの悪用によってエネルギー供給網が停止すれば、個人の安全から経済、さらには国家の安全に至るまで、あらゆるものが危険に陥る恐れがあります。そのため、IIoTではコンプライアンス規制、可視性、全体的なリスクへの対応が強く求められると言えます。
- エンドデバイス:消費者向けIoTのエコシステムでは、ホームセキュリティシステムからウェアラブルデバイス、スマートキッチン家電まで、入力は多岐にわたります。しかし、出力は、スマートフォンやタブレットで表示するテキストベースのメッセージや写真として配信されることがほとんどです。モバイルデバイスはIIoTシステムの一部ですが、流量計、ポンプ制御装置、バルブアクチュエーターなどの産業ツールもエンドポイントになる可能性があります。
IIoTは業界のニーズに合わせてカスタマイズできるという点において、他のIoTテクノロジーと一線を画します。また、IIoTデバイスには何よりも、極めて高い信頼性が求められます。ライトレールや配電網、さらには航空会社の荷物追跡装置などがオフラインになると、重大な結果を招くからです。そのためIIoTデバイスは、移動中のデータと保管中のデータを保護しながら、接続性を維持し、長期にわたって利用できるように設計されています。
さらに、産業現場に導入されるデバイスには、ERP、EAM、CMMSなどのさまざまなビジネスシステムとの連携機能が必要なほか、1日にたくさんの人々が操作できる必要があります。また、さまざまなプロトコルやデータ形式を考慮する必要があるため、従来の管理テクノロジーよりもデータ分析が困難です。つまり、頻繁に通信を行い、機能的役割ごとに異なるアプリケーションを搭載し、さまざまなアクセス権限を付与できなければなりません。
IIoTの導入は、より的確で戦略的なビジネス上の意思決定を促進するための投資です。そのため、IIoTシステムを採用する組織は、メンテナンスコストの削減、効率の改善、生産性の向上といった形でROIを達成する必要があります。
製造業におけるIIoT
製造業は、IIoTを最も積極的に採用している業界の1つです。その主な理由は、このテクノロジーを導入することで、業界のさまざまな効率化が可能になるためです。IIoTを利用すれば、機器をリモートで管理し、リアルタイムで監視して、プロアクティブに保守できます。また、製品の状態、場所、状況の追跡もはるかに容易になります。製品の使用パターンもIIoTでより簡単に特定できるため、人気のある製品の生産を増やし、組織に悪影響を及ぼす前に、人気のない製品の生産を中止することも可能です。
今日の製造業においてよく活用されているIIoTのユースケースをいくつかご紹介します。
- 資産の追跡 - IIoTシステムを利用すると、資産IDとして使用されるRFIDタグで資産を追跡できます。この識別子は、シリアル番号、モデル、コスト、使用地域など、資産に関するデータに関連付けられており、こういったデータはすべてクラウドに保存されます。資産が移動すると、RFIDリーダーによってタグがスキャンされ、クラウド上の記録が更新されます。この方法を使用すると、資産がどの程度の頻度で、どこで使用されたかを適切な関係者が追跡し、保守やスケジューリングなどのロジスティクスに関する意思決定を行うことができます。
- 施設管理 - IIoTは、施設管理のほとんどすべての場面で役立ちます。高度なテクノロジーにより、機器の予知保全、大量のデータの効率的な保存と検索、チームメンバー間のリアルタイムのコラボレーション、組織内外からのセキュリティ侵害に対するより強固な防御を容易に実現できます。
- 安全監視 - ジオフェンシングの境界は、作業者がある区域へ立ち入ったかどうかを判断するためによく使われます。センサーが目に見えないフェンスのように機能し、境界を越えるとアラートが送信されます。IIoT環境では、商品の安全性の確保や危険な環境にいる従業員の位置の追跡に利用できるほか、労災を最小限に抑えるのに役立つと考えられます。
- サプライチェーンの最適化/在庫管理 - IIoTを活用してサプライチェーンの可視性を高められます。センサーを利用すれば、あらゆる商品の位置や状態、在庫状況などをリアルタイムに把握できます。こういったデータをクラウドで保存/処理し、アプリケーションを使って各商品の位置の特定、状態の監視、商品の在庫切れの予測といったすべての情報を確認することも可能です。このデータは、企業のERP、PLM、またはMRPシステムと統合できます。そうすることで、サプライチェーンに障害が発生した場合には、その原因をさかのぼって突き止めることができます。
- 予知保全 - さまざまな地域で施設を運営する企業はIIoTを利用して、異なる都市、州、または国にある工場の運用を管理できます。IIoTの機能で機械の故障を予測すれば、必要に応じて保守をスケジュールできるため、修理の要求に備えて保守チームを各地域に置く必要はありません。また、IIoTを利用すると、異なる地域にある工場のデータにリモートでアクセスして、その運用を監視することもできます。
IIoTとMES (製造実行システム)の関係
IIoTがMES (製造実行システム)に取って代わるのか、それともMESを補完するのかという問題は、いまだに議論されています。一部の業界関係者は、IIoTがいずれはMESに取って代わる、あるいはMESの最新化を推し進めると主張しており、MESシステムのほとんどが時代遅れで、工場に設置されたセンサーからデータをリアルタイムに収集する機能を備えていないと述べています。また、MESはデータの長期的な保存、AI、分析に対応した設計にもなっていません。その結果、データが収集されたとしてもサイロ化してしまい、工場の運用を包括的に可視化し、機械の故障やその他の障害を予測し、プロセスを最適化する能力の妨げとなります。
IIoTとMESの2つのシステムが補完関係にあると主張する人もいます。その理由の1つとして、MESが生成する製品データや保守データをIIoTで利用すれば障害を予測できる、ということが挙げられます。このシナリオでは、MESはセンサーを搭載していないデバイスの代理として機能し、IIoTシステムと通信します。また、MESで運用に関する情報をマッピングして保存すれば、IIoTを利用した施設の自律的な運用が可能となります。
この問題はまだ決着していませんが、IIoTソリューションの導入を考えているメーカーは、近い将来にMESの使い方を見直すことになるでしょう。
インダストリー4.0の一部としてのIIoT
IIoTは、インダストリー4.0の重要な構成要素の1つです。
インダストリー4.0とは、この10年の間に産業分野で受け入れられた技術的進歩や導入された新しいアプローチを指す言葉です。この期間は業界内で、製造業における「第4次革命」と呼ばれています。第1次は、蒸気機関を動力とする製造プロセスの機械化でした。第2次は組み立てラインの導入と電気の登場、第3次はコンピューターの台頭と産業プロセスへの自動化の導入でした。そして、第4次産業革命は、IIoT、CPS (サイバーフィジカルシステム)、CC (コグニティブコンピューティング)、M2M (マシンツーマシン)などのテクノロジーや新しいプロセスを産業インフラに統合することと定義されています。
IIoTプラットフォームの定義
IIoTプラットフォームとは、産業プロセスと情報システムを接続するために連携して機能する一連のハードウェアとソフトウェアです。この中間層はさまざまなコンポーネントで構成されますが、少なくとも、ベースとなるソフトウェア(多くの場合はSaaS)、IoTデバイス、およびその2つを接続する物理ゲートウェイが必要です。
ソフトウェアもハードウェアも、数多くの個々の要素で構成されています。ハードウェアとして一般的なのは、スマートセンサー、IoTデバイス、HMI (ヒューマンマシンインターフェイス)、エッジデバイス、産業機械などです。ソフトウェアには、オペレーティングシステム、ランタイムシステム、クラウドベースソフトウェア、アプリケーション開発環境、データ可視化ツール、データ保存ツールなどがあります。また、鉄道会社や電力会社などの業種に特化して設計されたIIoTプラットフォームや産業用アプリケーションもあります。
IIoTプラットフォームの主な目的は、接続されたすべてのマシンとプロセスを一元的に管理しながら、運用全体を可視化し、状況やニーズの変化に応じて最適化するためのインサイトを収集する手段を提供することです。
結論
IIoTは産業ビジネスの未来である
IIoTは、産業環境におけるビジネスプロセスの最も重要なトレンドの1つです。また、市場のスピードが増し、テクノロジーの変革がより頻繁に起こる中、IIoTは企業が俊敏性と競争力を維持するのに役立っています。
IIoTは、予知保全によるコスト削減、自動化を活用した新たな運用効率、持続可能なエネルギー消費、安全の改善による生産性の向上など、産業運用のほとんどすべての側面を進化させることができます。さらに、一元管理とデータ分析の集約により、これまでにない可視性をもたらします。IIoTを導入すれば、あらゆる産業環境で、新たなレベルのパフォーマンスと収益性を実現できるでしょう。
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